災害救援緊急資金(DREF)とは? ~赤十字の被災者をいち早く救うためのしくみ~

 台風、サイクロン、干ばつ、洪水といった気候変動によってもたらされる自然災害や長引く紛争、新型コロナウイルス感染症の蔓延など、こうした災害はひとたび発生すれば、インフラ、水、教育、保健など様々な分野に影響が波及・連鎖し、その被害はますます複雑化しています。

 日本赤十字社では、海外で大規模な災害や紛争などの緊急事態が発生した際に、被災地の赤十字社が現地で実施する救援・復興支援活動を財政的に支えるための「海外救援金」を募集します。赤十字に限らず国際機関やNGO団体でも同様の救援金等を募集するため、皆さんもご協力いただいたことがあるかもしれません。しかし、すべての人道危機に対して、その都度海外救援金を募集するわけではありません。
 メディアの注目が集まらないような中小規模の人道危機に対しては、救援金を募集しても十分に集まらないこともその理由の一つです。一方、国際社会の関心が低いからといって、現地の人道ニーズが必ずしも小さいわけではありません。そのような現地の救援・復興支援活動をどのように支えたら迅速な支援が行えるのでしょうか。

 今号では、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、192の赤十字社・赤新月社からなる国際赤十字が、最も支援を必要とする人々に迅速に手を差し伸べるための仕組みをご紹介します。

海外で災害が起きた時、真っ先に動くための資金を蓄える仕組み

 世界では、毎年300件前後の大小さまざまな災害が発生しています。[1]特に、気候変動の影響により気候や気象に起因する災害の割合が増加しています。一方、被災状況や被災地域によっては、関心と資金が集まらず、被災したコミュニティが完全に放置される危険性があります。

 国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)では、平時より皆さまから頂いた寄付を災害救援緊急資金(DREFDisaster Response Emergency Fund ※通称:ドレフ)として備え、人道危機が発生した時に、現地の赤十字社または赤新月社が支援を要請した後24時間以内に資金を拠出し、直ちに現地で救援活動を開始できるよう準備しています。

[1] 2022_IFRC-World Disaster Report_EN.pdf

災害救援緊急資金(DREF)についての動画(英語のみ)
Disaster Response Emergency Fund (DREF) | IFRC

予測して行動する“Anticipatory Action”

 国際赤十字では、自然災害がもたらす被害を軽減するため、気象予測と災害リスクの分析を行い、実際の災害が起こってからでなく、前もって活動を開始する新たな取り組みを行っています(台風や干ばつなど)。災害救援緊急資金(DREF)は、その際の活動資金としても活用されています。

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 例えば、202210月に台風がフィリピンに接近した際、フィリピン赤十字社は早期行動対応方針を発動し、災害救援緊急資金(DREF)から拠出された資金を活用して、職員とボランティアが避難生活支援キット(SSKShelter Strengthening Kits)を配布・設置する活動を行いました。これら早期行動により、フィリピンの中でも台風によるリスクが高いと事前に特定された地域で合計78世帯がサービスを受け、地域住民の意識が向上し、早期の避難により人々は家や財産への被害を免れました。

 2022年は、災害救援緊急資金(DREF)の活用により、世界85か国127の救援事業を通じて計416万人に支援を届けることができました。[2]日本赤十字社は、「寄付メニュー」の一つとして、この災害救援緊急資金(DREF)への寄付を受け付けており、この資金を支えるため、2022年度には1,000万円を拠出しました。国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)では、現地の最前線の活動を即時に支援できるこの災害救援緊急資金(DREF)による支援を今後ますます拡充していく方針です。

[2] IFRC GO - Home

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 災害や緊急事態は、何の前触れもなく突然襲いかかってきます。そのような状況下では、支援を求めている人々への緊急救援は時間との戦いです。「迅速な支援があれば救えるはずのいのちが残念ながら失われてしまう、それは仕方のない現実…」と諦めることなく、皆さまからのご支援で多くの人々を救うことができます。

 皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。

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