【速報10】イスラエル・ガザ人道危機:大規模な武力衝突から1カ月、最前線で救援活動を続ける赤十字

 イスラエルとガザでの大規模な武力衝突から1カ月が経過し、現地は緊迫し憂慮すべき状況が続いています。被害は拡大する一方で、双方合わせて死亡者数は11,422人、負傷者も30,808人を超えました。(11月6日現在:現地当局及びUN OCHA)特に女性、子ども、高齢者、けがや病気を抱えた民間人が苦しい状況にあり、一刻も早い人道状況の改善が必要です。いまだ大多数の人質が解放されておらず、イスラエルではその家族たちが安否もわからないまま、ひたすら再会の日を待ち望んでいます。ガザ地区では病院や救急車が直接攻撃を受け、制限しながら繋いできた燃料もまもなく底をつきます。水や食料といった命をつなぐ物資は十分な数いきわたっておらず海水を口にせざるを得ない人びともいます。自らも愛する人を亡くしたり、困難な状況にありながらも、イスラエル・ダビデの赤盾社(イスラエルの赤十字社)とパレスチナ赤新月社のスタッフやボランティアは最前線で救援活動を続けています。

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救援活動を行うイスラエル・ダビデの赤盾社のスタッフ©MDA

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救援活動を行うパレスチナ赤新月社のスタッフ©PRCS

民間人や医療施設、人道支援活動は保護の対象

 戦時のルールである国際人道法において、民間人や医療機関・医療従事者、人道支援に携わる者は明確に保護の対象となっています。しかしながら、今回の人道危機では日赤が2019年から支援しているパレスチナ赤新月社のアルクッズ病院をはじめ、多くの病院や救急車が爆撃の危機にさらされ、医療従事者が命を落としている現状があります。

 ガザ市で人道支援の車列が砲撃を受ける事例も発生しています。11月7日は、赤十字国際委員会(ICRC)のトラック5台と車両2台がアルクッズ病院をはじめとした医療施設へ医療物資を運搬していましたが、トラック2台が攻撃にあい損傷したほか、運転手が軽傷を負いました。ガザ地区で支援活動を継続しているICRCガザ地区代表部のウィリアム・ションバーグ代表は次のように述べます。「現状のままだと人道支援がおこなえず、助けを待っている人たちの緊急のニーズに応えることができません。戦時のルールを定めた国際人道法にのっとって人道支援団体、病院、民間人は守られなければなりません」

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緊急物資を載せた車両©ICRC

イスラエル・ダビデの赤盾社の活動状況

 武力衝突の当初から24時間体制で支援を行っています。活動中に3人が亡くなり、その他にも負傷したり救急車が損壊するなど、スタッフやボランティアは、自らも危険な状況にありながらも対応に取り組んでいます。(活動の様子が分かる動画はこちら

  • 4,000人以上の患者を治療(107日以降、南部、中部、北部にて展開)
  • 1,500台の救急車、10,000人以上の救急隊員、救急救命士、救急隊員を動員
  • 全救急車にスタッフが配置され、24時間体制待機中。平時に比べ130チーム増の体制
  • 寝たきりなど、移動が困難な方の避難のため、病院間の搬送を担い、保健当局を支援
  • 授乳が困難な母親に代わり、赤ちゃんにミルクを与えた(全600リットル)
  • 市民2万人を対象に、外傷ケアを中心とした無料のオンライントレーニングの実施
  • 救急車、移動集中治療室、病院、診療所供給用の血液の確保(5万ユニット以上)
  • 緊急時対応計画の見直し

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出動準備をするイスラエル・ダビデの赤盾社の救急隊員と救急車©MDA

パレスチナ赤新月社の活動状況

 日赤が2019年から支援してきたアルクッズ病院と付近への爆撃も強まる一方で、救援活動中のスタッフ4人が亡くなりました。同病院に通じる道路が通行できない、また病院の燃料も今日明日にも尽きてしまう、と悲痛な声が届いています。こうした状況の中、同社のスタッフやボランティアは休む間も惜しみ、24時間体制で支援に当たっています。(活動の様子が分かる動画はこちら)。

ガザ地区

ガザ地区全体の避難民は150万人にのぼります(11月9日現在:UNOCHA)。ガザ市のアルクッズ病院が併設されているパレスチナ赤新月社の本部には14,000人、南部ハンユニスのアルアマル病院では6,000人が避難生活を送っています。

  • 68,913世帯への救援物資(食料品、衛生キット、ミルク、安全な飲料水など)配付
  • 379,037人への支援サービスを実施。
  • 食料品、医療消耗品、医療機器、救援物資、安全な飲料水、ミルク、乳幼児用おむつ、テント、衛生用品等の入った259の積み荷を受領 (114日現在)
  • 緊急搬送サービスの提供(30台の救急車、113人の救急救命士等スタッフ、185人のボランティアを動員)
  • 12,204人への治療を実施
  • 対象者59,306人に対する地域サービスの実施
  • 攻撃を受ける中、活動するスタッフ・ボランティア16,228人を対象に心理社会的活動を実施

エルサレムを含むヨルダン川西岸地区

  • 2,408人への緊急医療サービスの提供
  • イスラエルから強制送還された3,327人のガザ地区の労働者向けの心理社会的活動開始

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負傷者を搬送するパレスチナ赤新月社のスタッフ©PRCS

エジプト赤新月社の活動状況

 エジプト赤新月社はエジプト側からガザ地区への支援物資の運び込みや、ガザ地区からのエジプト側へ治療目的で避難した人びとへの後方支援を担っています。具体的な活動内容は以下の通りです。

  • エジプト赤新月社が所有する複数の倉庫を駆使しての支援物資の管理
  • ガザ地区からエジプト側に医療目的で避難した46人の支援に加え、うち同伴者のいない子ども6人への支援
  • 医薬品、食料、飲料水などの物資を積んだトラック合計268台をラファ国境に運搬(112日現在)
  • 保健省が運営する野戦病院や地域の病院の運営支援
  • 上記野戦病院やアリシュ病院、シェイク・ゾアイド病院、ベイル・エル・アブド病院のトリアージテントの支援
  • 心理社会的支援、離散家族支援、現金給付、救急法の実施

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支援物資の準備をするエジプト赤新月社とパレスチナ赤新月社のスタッフ©ERC

現地では過酷な状況が続いています。今私たち1人ひとりに出来ることは何でしょうか?日本赤十字社は引き続き現地の赤十字・赤新月社を通じて苦しい状況に置かれた人びとへ支援を届けることに尽力する一方で、国際赤十字と連携して国際人道法の遵守を紛争当事者へ強く要請し、人道的な配慮と基本原則の尊重を求めていきます。みなさまの温かいご支援を引き続きよろしくお願い致します。

「イスラエル・ガザ人道危機救援金」

受付期間: 2023年10月17日(火)~2024年1月31日(水)

使途  : 赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟、イスラエル・ダビデの赤盾社、パレスチナ赤新月社、日本赤十字社が行う救援・復興支援活動等に使用されます。*周辺国等に人道危機が波及した場合には、その対応を含む。

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