人びとが自分たちで立ち上がることを支えるいのちの泉をめざして
ルワンダの人びとが自分たちの力で立ち上がり、災害に立ち向かっていくことを目指し、日本赤十字社は2019年度からルワンダ赤十字社と協力のもと「気候変動等レジリエンス強化事業」を実施しています。今号では、10月22日から28日まで、現地で事業モニタリングを実施した日赤職員より、給水施設の建設が進む事業地の様子をお届けします。
事業地のギサガラ郡ムキンド地区は、首都キガリから南へおよそ5時間、車で走ったところにあります。
眼下になだらかに広がる畑を見下ろすと、ふと視界に入ってくる、茶色い、蛇行する河川の向こうは、隣国ブルンジです。
蛇行する河川の向こうはブルンジです ©JRCS
水汲みは子どもと女性の毎日の日課
この丘陵地帯に住む村人たちは、毎日往復30分以上の道のりを、谷底の水場まで歩いて水を汲みに行きます。谷底まで降りる道は草を刈っただけの山道で、雨が降っていなくても、ちょっと気を抜くと滑ってしまいます。ルワンダに駐在する日赤代表が「事業地に行くときは、足首までしっかり覆える、グリップの良い靴を履いてきた方が良いですよ」と言っていた理由がよくわかりました。水場はそんな道を降りたところにあります。
水量が少なく、管の先から飛び散って出るので、水汲み用のポリタンクの口から水がこぼれ出て、タンクを満たすのに時間がかかります。そのため、水場で列を作って自分の順番を待たなければなりません。ようやく自分の順番が来ても、特に幼い子どもはあまり重いと運べないので、半分くらいしか水を入れられません。
どんなに大変でも、天気が悪くても、道が悪くても、水くみは毎日しなければなりません。水は生存に不可欠な、命綱だからです。しかし、時間がかかるうえにお金にならない仕事は雑用と見なされるので、この村では水汲みは子どもと女性の仕事とされています。
水が簡単に手に入らないことが、子どもの学習や友だちと遊ぶ時間、女性が自立するために仕事をする時間を奪っているのです。
村に給水場ができる!
今、村では今年9月から始まった給水施設の設置工事が急ピッチで進んでいます。これまでに、水源から村をつなぐ給水パイプを設置する10キロ超の溝の掘削工事が完了しました。引き続き、貯水タンクの設置や水源の取水施設の工事が進んでおり、来年の2月末には完成する予定です。完成後は、すべての村人の家から500m以内に給水場が設置されます。これまで往復の移動だけで30分かかっていたところが、10分程度に短縮されます。また、今の水源では1人ずつしか水汲みができませんが、新しい給水場では一度に2人が水を汲めるようになります。
給水設備の工事現場で水をくむ村人 ©JRCS
これまで、渇きを潤すことで精一杯で、手を洗うことすらままならなかった人びとが、手を洗い、水浴びをし、家の掃除をして、家畜に存分に水を飲ませ、家庭菜園に十分な水やりが出来るようになる。村人にしてみれば、嬉しいけれども、まだまだ信じられない、といった様子です。
さらに、1日3回、合計2時間近くを水汲みに費やしてきたのが、その時間が半分以下になることで、水汲みの役割分担さえ変わるかもしれません。女性と子どもだけではなく、男性でも仕事に行く前に水汲みができるかもしれません。実際、給水設備が整備されている隣村では、水汲みは力のある男性が担っています。そうなれば、女性と子どもはこれまで水汲みに費やしていた時間を他の活動に使えるようになります。
小さな水場が、村人たちの日々の生活、そして生き方を大きく変え、そして子供たちの可能性を広げることにつながります。
この取り組みは、皆様からいただいたご寄付によって支えられています。日本赤十字社へのご支援をよろしくお願いします。