バングラデシュを直撃したサイクロン「レマル」、懸命な救援活動が続く
強風と大雨を伴う大型のサイクロン「レマル」が、2024年5月末バングラデシュの沿岸部を直撃し、最大瞬間風速30.8メートルを記録しました。沿岸部では、豪雨に伴う高潮により2メートルを超える洪水が発生し、家屋や家畜、養殖場、農耕地などが甚大な被害を受け、生活と食糧不安が深刻化しています。また、広範囲に及ぶ浸水により、給水設備やトイレが破壊され、人びとは十分な衛生設備や清潔な飲料水が利用できず、感染症など健康リスクの拡大が懸念されています。
被災地域の多くの住民が、住む場所を失い、十分な食糧と安全な水の確保も難しく、早急な食糧支援や給水衛生支援、住宅再建支援、保健医療支援などが求められます。
7月から始まった学生による抗議活動により、現在バングラデシュ国内は不安定な治安情勢が続いています。そのような中でも懸命な救援活動が続いています。
【被害状況】5月31日時点[1]
被災者数:約460万人
避難者数:80万7,023人(9,424避難所)
死者数:16人
家屋被害:17万3,000棟以上(全壊4万338棟、半壊13万3,528棟)
大きな被害が観測された地域:クルナ、バゲルハット、シャトキラ、ポトゥアカリ、ピロジプール、ボルグナ、ジャロカティ、ボラ(8県)
サイクロンレマルにより倒壊した家屋(クルナ)©BDRCS
バングラデシュ赤新月社の対応
バングラデシュ赤新月社は、サイクロンの上陸前から、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)や赤十字国際委員会、各国赤十字・赤新月社、各省庁と協力し、特に被害が懸念された優先地域に2,000人以上のボランティアや職員を派遣して、早期警戒情報の伝達と住民の避難誘導を開始しました。その後、被災地域の住民に対して、応急処置や食糧配付、避難所の管理など、人びとの安全と健康を守る活動を継続しています。
サイクロン接近に伴い住民を避難所へ誘導するバングラデシュ赤新月社スタッフとボランティア(バゲルハット)©BDRCS
具体的には、約8万3,000人に7日間分の食糧セット、約1万3,750人に衛生キットを配付し、バングラデシュ赤新月社の備蓄緊急物資から約5万人へビニールシート、約9,500人へマットレス等を配付しました。また、巡回診療チーム7班を派遣し、9,700人以上に一次医療サービスを届け、1,600人以上に心理社会的支援(こころのケア)を提供しています。
2つの被災地域(クルナ、シャトキラ)では、日本赤十字社(以下、日赤)の支援により整備されている給水・衛生対応キット※を活用した活動(詳しくはこちら)が展開されました。海水淡水化のための移動式水処理プラントにより、4,885世帯に5万9,000リットル以上の安全な飲料水が提供されています。
バングラデシュ赤新月社と連盟が協力して、緊急ニーズ調査を行い、緊急救援活動を展開する一方で、何千人もの人びとが依然として人道支援を必要としていると報告されています。長期的には、避難生活を続ける人びとへの安全な避難場所や水・食糧の提供、こころのケアなどの支援に加え、復興、生活の再建に向けた支援が求められます。
※日赤は2011年度から連盟と協働し、アジア・大洋州地域における給水・衛生災害対応キットの配備に取り組んでいます。このキット一式には、浄水ユニットやタンク、浄水剤、水質検査キット、簡易トイレ設置用資材、衛生教育用の文具などが含まれており、緊急時にはそれらを正しく使えるよう、現地の赤十字社とスタッフやボランティアの研修も実施しています。
移動式水処理プラントを活用し世帯配付用飲料水を準備するバングラデシュ赤新月社スタッフとボランティア©BDRCS
同左 ©BDRCS
国際赤十字の対応
連盟は、バングラデシュ赤新月社の救援活動を支援するため、5月29日に1,000万スイスフラン(約17億円)の緊急救援アピールを発出しました。
日赤も緊急救援活動を支援するために、同アピールに対して500万円の資金援助を決定しました。
サイクロンにより家屋を失った親子(バゲルハット)©BDRCS/IFRC
コックスバザールの避難民キャンプ
日赤は、2017年8月にミャンマーで発生した暴力行為を逃れ、バングラデシュへ避難してきた人びとの命と健康を守るため、同年9月から同国南部コックスバザールの避難民キャンプで支援を継続しています。避難民キャンプは、サイクロンの直撃は免れましたが、強風や大雨により、一部の地域で土砂崩れや家屋の倒壊、水・衛生設備などへの被害が確認されました。
日赤が主に支援を行っている保健医療分野においても、医療施設への直接被害は報告されていませんが[2]、一部の診療所では外来患者の受け入れを縮小するなどの対応がなされました。バングラデシュ赤新月社のボランティアによるサイクロン到来の注意喚起や、災害時用の備蓄により、影響は最小限にとどまっているとの報告があります。
バングラデシュ各地を襲う洪水
モンスーンの季節を迎え、2024年6月以降続く豪雨や、隣国の河川の水位上昇に伴う水の流入により、北部地域(ジョムナ川流域)と北東部地域(シレット)で繰り返し洪水が発生しています。これに対しても、バングラデシュ赤新月社は連盟の支援のもと対応を続けています。
続く大雨により被災状況の悪化が懸念されますが、地域に根付く現地の赤新月社が中心となり、被災者へ支援を確実に届けるよう、被災地のニーズに基づいた活動が展開されています。
バングラデシュ赤新月社の複数の救援・復興活動を支えるため、日赤は国際赤十字の一員として引き続き協力していきます。
北東部洪水地域(シレット)で救援物資を被災地へ届けるバングラデシュ赤新月社ボランティア©BDRCS/IFRC
バングラデシュ被災地域(北部洪水、北東部洪水、サイクロンレマル)
バングラデシュ南部避難民救援金を受け付けています
詳しくは以下のボタンをクリックして、バングラデシュ南部避難民救援金ページをご覧ください。
また、日赤のバングラデシュ南部避難民支援に関するこれまでの活動もこちらからぜひご覧ください。
*国際赤十字では、政治的・民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し、『ロヒンギャ』という表現を使用しないこととしています。