第34回赤十字・赤新月国際会議がジュネーブで開催

 第34回赤十字・赤新月国際会議が20241028日(月)から31日(木)にかけてスイス・ジュネーブで開かれ、ジュネーブ諸条約締約国のうち191カ国の政府と、赤十字国際委員会(ICRC)と国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、186の各国赤十字社・赤新月社が一堂に会しました。原則4年に1度開催されるこの会議は、1949年のジュネーブ諸条約の策定、地雷禁止に向けた世界的な取り組み、そしてパンデミックへの備えなど、過去の歴史を遡ってみると、人道における重要な歩みを推進してきました。

  国際会議に先立って開催された、国際赤十字・赤新月運動の代表者会議では、迅速で断固とした行動が必要とされる危機に対処する、という固い決意を反映して、原則に基づく人道支援活動の尊重と支援を求める呼びかけなど9つの決議(リンク先は英語)を採択しました。

画像 第34回赤十字・赤新月国際会議の会場の様子

 今回の国際会議では、世界規模の課題のうち人道上の課題解決を推進するため、5つの重要な決議が採択されました。以下、各決議を簡単にご紹介いたします。

①国際人道法の遵守に向けた普遍的な文化の醸成

 この決議は、国際人道法の遵守に関する各国政府の取り組みを更新し、その適用を強化することで人々の苦しみを軽減することを目的としています。紛争当事者に違反行為を止めるよう説得すること、国際人道法遵守への取り組みを国の最高指導層に求めること、武器移転に関する義務を遵守することなど、国際人道法の遵守を促進するための行動を各国政府に促しています。また、今日の複雑な紛争下でもこうした重要な保護が有効に機能し続けるよう、国内法の改正、軍の訓練、条約の批准、国内における国際人道法関連組織の強化など、具体的な行動も盛り込まれています。

②武力紛争中のICT(情報通信技術)活動による潜在的な人的被害からの民間人及びその他の保護対象者・対象物の保護

 この決議は、すべての国の政府と各国赤十字社・赤新月社が、悪意あるICT活動から民間人を守るために取り組む、という強いメッセージを発信しています。民間人の保護に加えて、こうした活動は国際人道法に則ったものでなければならないと合意できたことは心強いものです。この機運に乗じて、ICRCは、国際人道法の遵守という普遍的な文化を醸成するための独自の取り組みを通して、今回の決議を効果的に実行に移す努力を優先的に進めていきます。

③包括的な法的・規制枠組みによる災害リスクガバナンスの強化

 この決議は、危険性が高まる世界情勢を背景に、特に低・中所得国に焦点を当て、災害に関する法律や政策のグローバルな強化を継続的に推進するものです。また、IFRCの新しい災害リスク管理ガイドラインが重要な役割を担います。

④地域のリーダーシップ、能力、基本原則に基づく人道支援の強化と、レジリエンスの実現

 この決議は、各国赤十字社・赤新月社や世界各地の地域のアクターによる、災害リスク軽減、気候変動への適応、パンデミックへの備え、危機からの復旧など、効果的で地域主導の人道支援活動の実施に対する支援を強化することを目的とし、国際赤十字・赤新月運動におけるローカリゼーション(現地主導の人道支援活動)に重点を置いています。

⑤激甚災害の人道的影響から人々を守る:予測型行動の強化に向けた協働

 この決議は、気候関連の災害の増加と、それが人道的課題に及ぼす複合的な影響を踏まえ、各国政府と国際赤十字・赤新月運動に協力の枠組みを提供し、災害への備えと人道的対応をより確実なものとするための対策を拡大することを目的としています。

決議の採択にあたって

 上述の決議の採択にあたり、ICRCのミリアナ・スポリアリッチ総裁は次のように述べました。

画像 ICRCのミリアナ・スポリアリッチ総裁

 「今日の紛争で私たちは、国際人道法を尊重する意思の欠如により人々の悲惨な苦しみを目の当たりにしています。この国際会議では、戦時下の基本的なルールを遵守する集団的責任を再確認しました。これは、極端に二極化した昨今の情勢において重要な成果です。ここから私たちは、国際人道法を遵守する文化が根付くようさらに推進していき、これらの決議が紛争の影響を受ける人々に実質的な効果をもたらすよう行動につなげていきます。」

画像 IFRCの ケイト・フォーブス会長

 国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)のケイト・フォーブス会長は次のように述べました。

 「今回の会議により、現地主導の解決策に世界的な支援が加わることで、私たち赤十字の活動が最大限に強化されることが強調されました。支援対象の人々が将来の課題に最善の形で対応できるようになります。この重要な成果を形にした各国赤十字社・赤新月社をはじめとする国際赤十字・赤新月運動ならびに各国の皆さまの連帯の精神に感謝いたします。将来を見据え、私たちは新たな決意と目的を持ってこれらの決議を推進していくことが求められています。」

 上記原文(英語)はこちらのURLから。

画像 国際会議にて日本赤十字社の見解を述べる清家社長

 日本赤十字社からは、清家社長をはじめユースボランティアを含む計10名が代表団として参加し、上述の国際人道法関連の決議を踏まえ、日本政府と「国際人道法の普及強化」にかかる共同誓約を発表しました。国際人道法の普及強化に関して清家社長は、「教育が欠かせないものであり、人類の英知である国際人道法の知識をもって、一人ひとりが国際社会の一員として非暴力や人権尊重の文化を育み、恒久の平和について探求し続けてほしいと願います」と日本赤十字社の見解を述べました。

日本政府・日本赤十字社の共同誓約

「国際人道法(IHL)の普及強化」(概要)

①公教育等を通じたIHLの普及による日本国内の世論喚起

②サイバー空間での戦闘や新興技術を備える新たな兵器に関する各方面の研究と対話の促進

③赤十字・赤新月標章と文民保護標章を含む特殊標章のさらなる普及

共同誓約の原文(英語)はこちらのURLから。

共同誓約の和文(仮訳)はこちらから。

 日本赤十字社は、今回の国際会議での決議および日本政府との共同誓約を踏まえ、引き続き、人間のいのちと健康、尊厳を守るという使命を達成できるよう、「苦しんでいる人を救いたい」という皆様の温かい思いを結集して赤十字運動を推進してまいります。

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