タジキスタン:冬を迎える山岳地帯の村々に4,000枚の毛布を寄贈
株式会社オンワードホールディングス(以下、「オンワード」)は、同社製衣料品の回収・リサイクルを通じて毛布を生産し、世界各地に届ける「オンワード・グリーン・キャンペーン」を展開しています。同社は2009年から累計45,500枚の毛布を、支援が必要な人々に提供してきました。日本赤十字社(以下、「日赤」)は、2011年からこの取り組みに協力しており、今年はタジキスタン共和国(以下、「タジキスタン」)の赤新月社を通じて4,000枚の毛布を寄贈しました。
タジキスタンの現状と人々の暮らし
タジキスタンは中央アジアに位置し、国土の90%以上が山岳地帯です。人口は1990年代の約500万人から現在は1,000万人を超えています。主要産業は鉱業と農業で、ロシアなど隣国への出稼ぎが多いのが特徴です。豊富な水資源により水力発電を行い、隣国へ電力を輸出していますが、農村部では上下水道や道路といった基礎インフラが未整備で、生活環境の改善が求められています。
今回の寄贈先であるラシュト地区は標高1,500メートル以上の山岳地帯に位置し、首都ドゥシャンベから車で4時間の距離にあります。さらに、同地区奥地のハゾチャシュマ村とヤハブ村へは未舗装の山道を進む必要があり、いずれも水害や降雪の影響で孤立することがあります。
ラシュト地区は1990年代の内戦で激戦地となり、長らく立ち入りが制限されていました。加えて、ハゾチャシュマ村は、2015年の地震により多くの家屋が倒壊しました。現在、住民の多くは農業に従事し、厳しい自然環境の中で生活しています。そこで、タジキスタン赤新月社は地元行政や村の代表者と協議し、ヤハブ村の202世帯とハゾチャシュマ村の98世帯にそれぞれ5枚ずつ、計1,500枚の毛布を配布する計画を立てました(残り2,500枚は同国南西部のハトロン州に配布予定)。対象は地震や洪水で被災した家庭、高齢者世帯、障害のある方を含む世帯、孤児の家庭などです。
寄贈式典 ~毛布を通じて支援の輪を広げたい~
配布準備にあたるタジキスタン赤新月社のボランティア©日本赤十字社
寄贈式典に集まったハゾチャシュマ村の子どもたち©日本赤十字社
寄贈式典は寄贈先である、ハゾチャシュマ村、ヤハブ村の2か所で行われ、住民たちが温かく迎えてくれました。ハゾチャシュマ村のイスカンダロワさんは「わたしたちの家族は、冬に石炭や薪が不足しても買う余裕がありません。この毛布を敷いたり、寝具として活用したりして、寒さをしのぐことができます」と感謝の言葉を述べました。
オンワード樫山の山本氏は「今回寄贈で訪れた2つの村で見た家屋は土壁で出来たぜい弱なつくりの家で冬の寒さが厳しいであろうなと思いました。どこに行っても『これから寒くなるのでとても良いタイミングで支援いただいた』と喜ばれ、時期的にも良かったと思っています。寄贈した毛布が少しでもお役に立てばうれしいです」と語りました。また、「現地での支援が終わりではなく、日本の皆さまにタジキスタンの現状を知っていただき、支援の輪を広げていきたい」と今後の展望を述べました。
毛布を受け取ったイスカンダロワさんご家族©日本赤十字社
毛布の作製に携わったオンワードコーポレートデザインの原氏は「リサイクル品の不適切な廃棄が問題となる中、今回は衣類をリサイクルして作られた毛布がトレーサビリティを確保した形で現地に届けられました。このような取り組みを通じて持続可能な支援が実現できたことをうれしく思います」と話しました。
毛布を手にする子どもたち©日本赤十字社
式典に参加した原氏(左)、山本氏(右)©日本赤十字社
オンワードは「グリーンキャンペーン」を通じて不要衣類の回収とリサイクルに取り組み、衣料品の循環を推進しています。今回の毛布寄贈もその一環です。日赤は今後もオンワードと連携し、日本の皆さまと支援を必要とする人々をつなぐ活動を続けていきます。