海外救援活動報告書「きもちのしるし2019-2020」が完成しました!

報告書の表紙

海外救援金は、海外で大規模な災害や紛争等の緊急事態が発生した際に、被災国の赤十字社や日本赤十字社(以下、日赤)が現地で実施する救援活動・復興支援活動を支援するために募集されます。

現在は、「バングラデシュ南部避難民支援事業」「中東人道危機支援事業」の2つの事業で海外救援金を募集していますが、この度、2019年から2020年に海外救援金をもとに取り組んだ活動報告をまとめた「きもちのしるし2019-2020」が完成しました(こちらからご覧ください)。

本号では、事業地であるバングラデシュと中東レバノンで、「きもちのしるし」ではお伝えしきれなかった活動の詳細やその後の現地の様子をお伝えいたします。

中東(レバノン):厳しい紛争下でも人びとの健康を支え続ける

手洗いの仕方を学んでいる様子

子どもたちに手洗いの仕方を教えるレバノン赤十字社のボランティアとスタッフ©日本赤十字社

シリアでの危機勃発から10年目を経た中東地域にとって、新型コロナウイルス感染症によるさまざまな影響が広がった2020年は特に厳しい年でした。その中でも、激しい社会的混乱と経済破綻の状況の中で新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、加えて8月に首都ベイルートでの大規模爆発によって多くの人びとが被災したシリアの隣国レバノンは、三重、四重の危機に見舞われました。

レバノンでは、厳しい冬でも十分な暖をとることのできないシリア難民の人たちに加え、難民を受け入れる地域にも貧しい住民が多く、日赤はレバノン赤十字社とともに、それら双方の人びとに対して支援を行っています。2020年には、地元住民と難民の子どもたち2400人が共に学ぶ公立学校7校で、トイレや水道など衛生設備の改修や多目的施設・図書室などの整備を行いました。赤十字ボランティアによる手洗い教育も感染症を予防する基本対策の一環として行われており、感染症対策に関する活動は、あらゆる支援の場において実践されています。

新型コロナウイルスの感染拡大の以前から多くの困難に直面してきた中東の人たちですが、新型コロナウイルス感染症という新たな危機に直面した今だからこそ、現地赤十字・赤新月社のボランティアたちによる地域の中での助けあいと、それらを支える国を越えた支援が重要性を増しています。

バングラデシュ:「皆さんの支援に心から感謝しています」

日赤は2017年8月にミャンマーのラカイン州で発生した暴力行為から隣国バングラデシュ南部へ避難してきた人びとへの支援を同年9月から開始し、現在はバングラデシュ赤新月社とともに避難民キャンプの中にある診療所を拠点に診療活動、地域保健活動、こころのケアを継続しています。

診療所での活動を支えるボランティアのナルハサンさんは、自身もミャンマーからの避難民。「赤十字による避難民と受け入れ地域住民への保健医療支援に心から感謝しています」と話します。また、当時をふり返り、「子どもや高齢者を抱えながら必死に避難しました。現金を持っていない人は(国境の)川を渡るための船に乗れず、弱い立場の人びとはさらに過酷な困難に直面したのです」と続けました。

バングラディッシュの家族の皆さん

診療所に産前健診に来ていたウマイラさん、イエシスくん(写真中央)、家族の皆さん©バングラデシュ赤新月社

避難から3年が経過した今も、避難民キャンプでは、安全な水やトイレ、ごみ処理などの衛生設備が不足しており、さらに自然災害や人身売買などの懸念も尽きません。新型コロナウイルス感染拡大やキャンプ間の移動を制限するためのフェンス建設などもあり、避難民は精神的ストレスも抱えています。「帰還できるまでは、避難民のいのちを守るために保健医療の支援が必要です。日本の皆さんに、私たちの問題に関心を寄せてほしいと願っています」ナルハサンさんは最後にこう締めくくりました。

なお、「きもちのしるし」に登場したウマイラさんと生後8日目だった息子のイエシスくんですが、イエシスくんは元気にすくすく育っていると、現地から嬉しい報告が届いています。

長期にわたる人道危機にさらなる支援を

日赤は、バングラデシュや中東での事業のように、長引く紛争や暴力により被災者へのアクセスが困難となった国や地域で苦しんでいる人びとに対しても、赤十字の原則に基づいた支援を行うことが重要であると考えています。

中東では2011年、バングラデシュでは2017年から現在に至るまで人道危機が続いていますが、長期にわたる課題であるが故にメディアで取り上げられることが少なく、また新型コロナウイルス感染症という世界的な課題に直面している現在、新型コロナ以前から続く人道問題への関心がさらに低くなってしまっていると言わざるを得ない状況です。しかしながら、このような感染症の拡大により社会的・経済的にすでに脆弱なバングラデシュ、中東地域の人びとはさらに苦しい状態に直面しており、引き続き、そしてさらなる支援が必要となっています。

本号と「きもちのしるし」を通じて、日赤が支援を続ける本事業地域の現状を少しでも皆さまにお伝えすることができれば幸いです。皆様からのこれまでのご支援・ご協力に対して深く感謝申し上げます。今後とも、温かいご支援・ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

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