【終了】ハイチ(2010年ハイチ大地震 救援・復興支援)
ハイチ大地震 救援・復興事業報告書
2010年1月に発生したハイチ大地震後の救援・復興事業(2010年~2019年)の終了に当たり、事業報告書が完成しました。活動の記録などを掲載しています。ぜひご覧ください。
2010年ハイチ大地震・コレラ蔓延
ハイチ共和国の首都ポルトープランスから南西に25キロメートル(震源の深さ約10キロメートル)で2010年1月12日、マグニチュード7.0の大地震が発生。約21万7300人が死亡、負傷者は約30万600人に上り、首都を中心として甚大な被害をもたらしました。少なくとも17万5682戸の家屋が損壊。被災者は国民全体の5分の1にあたる約210万人に及び、約150万人が1555カ所もの避難キャンプでの避難を余儀なくされました。
さらに、大地震からの復旧もままならない2010年10月中旬、中央部アルティボニット県でコレラの感染が発生、短期間のうちに全国に蔓延しました。2010年10月から2014年3月までに、ハイチ国内での感染者数は72万5,608人、8,813人が命を落としました。
日本赤十字社の支援
日本赤十字社(以下、日赤)は2010年 1月13日から 3月31日の約2カ月半にわたり、「2010年ハイチ大地震救援金」を受け付けました。
募集実績(最終額) 21億6,207万6,041円
皆さまから寄せられた救援金をもとに、以下の活動を通して被災者の支援を行いました。
(1)緊急救援 【大地震】
日赤は、地震発生当日に職員を現地に派遣して、被災状況の調査や支援調整を行い、1月17日から約6カ月年にわたり、計74人の医療チームと基礎保健ERU(ERU:緊急対応ユニット)※を派遣する、日赤過去最長のERU事業を展開しました。 日赤の基礎保健ERUは、震源が近く被害が最も大きかったポルトープランスとレオガンで仮設診療所での診療と巡回診療を実施。約2万3,000人を診療しました。
※基礎保健ERU(Basic Health Care Emergency Response Unit)(現診療所ERU)は、緊急事態・大規模災害発生時に備えた緊急対応ユニット(ERU)の一つであり、30,000人を対象に、緊急時の予防・治療・地域保健などの医療サービスを提供できるユニットです。展開後1カ月間、外からの支援を得ることなく自己完結型のチームとして活動が継続できるように、テントや浄水設備、発電機、食料などを備えた資機材も併せて輸送します。
(2)緊急救援 【コレラ蔓延】
日赤は、大地震の復興支援と並行してコレラ蔓延への緊急対応を行い、2010年11月15日から約7カ月間にわたり基礎保健ERU(のべ31人)を派遣し、感染者の多い首都ポルトープランス、カルフール、および南県にてコレラ治療センターを設置して感染者を診療するなど、救援活動を行いました。
(3)復興支援(保健/給水・衛生事業)【大地震】
救援活動から復興支援に移行する際にレオガンで実施したニーズ調査では、水質の悪化や健康被害に関する課題が浮き彫りになりました。
そこで日赤は、衛生環境と健康状態の改善を目指し、レオガンで保健/給水・衛生に焦点を当てた復興事業を開始しました。保健ボランティアを育成し、彼らが主体となって健康促進活動や正しい衛生行動を広める保健事業と、給水所の建設・修繕、トイレの設置などの衛生事業により、地域全体が自分たちの力で病気を予防する力をつけるための復興支援が行われました。6万回以上の戸別訪問、700人以上の育成されたボランティア、3,000基以上のトイレの設置など、のべ14万人以上に包括的な支援を届けました。
(4)コレラ衛生促進事業 【コレラ予防】
一向に収束しないコレラの流行に対し、パン・アメリカン保健機構(PAHO)/世界保健機関(WHO)の協力の下、ハイチ政府とドミニカ共和国政府が『ハイチとドミニカ共和国からコレラを排除するための提携』をし、10年計画を策定しました。
日赤は、中央県下部のサバネットとコロンビエで2014年7 月から2016年12月までの30カ月間、コレラ予防のための衛生促進事業を実施しました。主にレオガンで実施した復興支援の保健事業と同様に、地元に保健ボランティアを育成し、特にコレラを予防するための正しい衛生行動と、下痢になった場合の対応方法を、のべ38万人に普及しました。
事業終了時には、住民たちが「自分たちでコレラを予防する」というメッセージを受け止め、500世帯以上が自ら自宅にトイレを作るに至りました。貧しいから、お金がないから、ではなく、正しい衛生行動をするために自分たちの持っている資材で穴を掘ってトイレを作る、ということが、大変大きな一歩となり、住民たちの自信となっています。
(5)ハイチ赤十字社血液センター建設事業 【組織強化】
大地震により、ハイチの「血液バンク」として機能していたハイチ赤十字社血液センターは大きな被害を受け、修復困難と判断されました。震災後、ハイチ赤十字社だけではなかなか計画が立てられない中、アメリカ赤十字 社が血液センターの建設を含む、赤十字ベースキャンプの土地活用計画(2016~2020年)を提案し、ハイチ赤十字社理事会が2014年、それに合意しました。日赤は2017年と2019年にアメリカ赤十字社を通じて計8,600万円の支援を実施しました。2019年内に完成予定です。
関連ニュース
1.日本経済新聞掲載
聴覚障がいに加え、地震で失った片足。二つの障がいがありながら、赤十字の仮設住宅建設に携わる男性のストーリーが紹介されています。ぜひご覧ください。
2.赤十字国際ニュース
2017年1月16日 ハイチ:長期的な活動が生んだタカラ
2016年3月9日 ハイチ:増加するコレラへの対応