ハイチ:長期的な活動が生んだタカラ
1月12日、ハイチでは大地震から7年目を迎えました。日本赤十字社(以下、日赤)は発災直後から現地に入り、緊急救援段階では日赤の医療従事者を含むチームから成る緊急対応ユニットを1カ月交代で6班派遣しました。復興支援では、地震の被害の大きかった西県レオガンにて、トイレ建設や手洗い指導などを中心とした地域住民参加型保健事業(以下、CBHFA)を展開しました。地震直後のハイチでは、国全体でトイレのある家庭は26%、田舎では17%のみであり(2011年UNICEF発表)、衛生促進は必須でした。
2010年10月から全国でコレラ感染が大流行し、その後も終息しなかったため、2014年7月から昨年12月末まで、ドミニカ共和国との国境付近にある中央県下部にあるサヴァネットとコロンビエという地域(コミューン)でコレラ予防のための衛生促進を中心としたCBHFAを実施しました。その活動で活躍したのが、レオガンでの活動時から赤十字のCBHFAで働く地元看護師たちです。
自分たちの村を良くしたい
CBHFAでは、日赤の要員など専門的な知識を持った国際スタッフが、まず地元の看護師など専門家に広い保健の知識、さらにその地域で特に問題となっている健康課題に関する知識や対処法について研修をします。ハイチの場合は、感染症、特にコレラが大きな課題であったため、その予防となる手洗いや正しい水の処理の方法、また下痢の症状を見る知識や経口補水液(ORS)を飲むことの重要性を伝えることが急務でした。
研修を受けた地元看護師たちが、さらに事業対象地域の村々に、ボランティアで活動を一緒にしてくれるコミュニティー・ファシリテーター(以下、ファシリテーター)を募り、彼らに知識や手法を伝え、一緒に住民たちに手洗いなどを伝えて回ります。
ファシリテーターたちは、村の人たちにはどのように伝えると一番わかりやすく伝わるかを考え、それぞれ寸劇をしたり、歌を歌ったりします。最初は恥ずかしいと控えめに知識を発表するだけだったファシリテーターたちも、地元看護師たちにリードされ、小道具を用意した本格的な寸劇ができるようになったりと自信をつけていきます。
いつまでも!赤十字とともに!
中央県下部では、啓発された住民たちが次々に自宅に自分たちでトイレを作りはじめ、11月末時点で数えてみると、なんと537ものトイレが作られていました。ファシリテーターたちも、「自分たちで啓発しながら自分の家にトイレがないというわけにはいかない」と自宅横に穴を掘って簡易トイレを作るなど、住民と相互に刺激し合って衛生が促進されています。
12月9日に開催された、クロージングセレモニーでは、地元保健省の担当者は、「赤十字の活動により、地域においてコレラが大幅に減った。非常に満足している」と喜びの感想を述べてくれました。ファシリテーターたちも、事業が終わっても赤十字の活動に貢献できるよう、赤十字ボランティアに登録したいと75人もの人が新たに登録し、今後も地元地域を盛り上げて行くこととなりました。
地元看護師のリーダーであるミヌスさんは、ファシリテーターたちから「またわからないことがあったら連絡してもいい?」と聞かれると、「いつでも連絡してちょうだいね!私はいつでも力になってあげるから。私たち、自分たちでコレラを撲滅できるのよ!きっとね!」と力強く約束しました。
2016年12月で、コレラ事業は終了しました。現在、日本赤十字社では昨年10月にハイチを襲った大型ハリケーン「マシュー」の被災地であるグランダンス県での復興活動を実施しています。引き続き、皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。