バングラデシュ南部避難民支援
国際赤十字では、政治的・民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し、『ロヒンギャ』という表現を使用しないこととしています。
バングラデシュ南部に暮らすミャンマーからの避難民
♦2017年8月、避難民の流入♦
2017年8月、ミャンマー・ラカイン州での暴力から逃れるため、多くの人が隣国バングラデシュ南部に避難しました。ビニールシートと竹で作られた簡易住居が広がる避難民キャンプでは、以前から滞在していた避難民と合わせて約100万人が今も暮らしています。そのうち8割を占めるのが子どもと女性たちです(2023年6月UNHCR)。
2017年の避難民流入当初のキャンプ。薪の山を運ぶ男性©Victor Lacken/IFRC
♦バングラデシュ南部避難民の今♦
ミャンマーへの帰還は依然として実現しておらず、衛生状態の悪さや自然災害のリスクも高い過酷な生活環境に加え、避難民は経済的・社会的に大きな制約を受けながら生活しています。一方で人びとのキャンプでの生活が長期化するにつれ、キャンプの様子にも変化が見られます。大きな道はレンガで舗装され、むき出しの斜面に植樹された木々が育ちつつあります。また、人通りの多い道の両脇には野菜や果物を売る露店や雑貨屋、茶店、食堂などが並び、キャンプの中で経済が回っていることを実感させます。
6年目を迎え人びとの生活の様子が垣間見えるキャンプ©日本赤十字社
♦日本赤十字社の対応♦
日本赤十字社は、避難民の大量流入直後の2017年9月より、国際赤十字とともに緊急支援活動を開始。現在はバングラデシュ赤新月社と協力して、避難民や周辺住民のレジリエンス強化や持続可能な支援の提供を見据えた中長期的な活動を行っています。
バングラデシュ南部避難民支援関連の最新ニュース
- 2024年8月21日 バングラデシュを直撃したサイクロン「レマル」、懸命な救援活動が続く
- 2024年5月22日 バングラデシュ南部避難民保健医療支援: バングラデシュ人と避難民が協力する赤十字の活動
- 2024年1月24日 バングラデシュ南部避難民支援:長期化する避難生活の健康を支える地域保健活動
- 2023年10月4日 バングラデシュ:避難民の苦悩とこころのケア活動がつなぐ希望の灯
- 2023年8月23日 バングラデシュ南部避難民の支援開始から6年: 長期化する避難生活と求められる継続的な支援
- 2023年3月22日 バングラデシュ南部避難民支援: 大火災の中で避難民コミュニティが発揮したレジリエンス
- 2023年2月8日 未来のわたしたちの健康のために~自分のコミュニティを守りたい女性ボランティアの紹介~
- 2023年1月18日 バングラデシュ南部避難民保健医療支援 避難民キャンプで生きる若者の苦悩と心理社会的支援
- 2022年10月5日 バングラデシュ南部避難民保健医療支援 避難民の5年間:ミャンマーからバングラデシュへの逃避行と避難民キャンプの生活
- 2022年7月20日 バングラデシュ南部避難民保健医療支援 避難民大量流入から5年:日赤支援の軌跡とこれから
- 2022年5月25日 バングラデシュ:避難民支援と「こころのケア」活動
これより以前の過去のニュースはこちらからご覧ください。
日本赤十字社の支援事業
日本赤十字社は、避難民の大量流入直後の2017年9月より、避難民のいのちと健康、尊厳を守るため、国際赤十字・赤新月社連盟とともに緊急支援活動を開始しました。現在はバングラデシュ赤新月社と協力して、地元の医療者や避難民ボランティアの育成などをとおして、現地の人びとの能力強化による持続可能な支援の提供を見据えた活動を行っています。バングラデシュ赤新月社が主体となって提供している保健医療サービスでは、慢性疾患への対応や母子保健の改善、疾病予防などに重点を置いた取り組みのほか、地域保健活動や心理社会的支援(こころのケア)を実施し、包括的な患者支援を行うことを目指しています。(※以下、2017年9月~2024年3月延べ活動実績数)
活動実績:19万6700人以上を診察
診療所では、毎月2,400人前後の患者さんを診察しています。風邪や皮膚疾患、胃腸炎や水溶性下痢症などの患者さんのほか、受診の増加がみられる糖尿病や高血圧など慢性疾患のケアにも力を入れています。キャンプの中という限られたスペースや食事の習慣を踏まえたうえで、生活様式の改善や運動指導なども行っています。(写真:診療の様子©IFRC)
活動実績:1万9400人以上にサービスを提供
キャンプでは文化的・環境的背景のために産前産後の健診を受けない妊婦も多く、新生児死亡率や妊産婦死亡率が高いことも課題となっています。妊産婦と子どもたちの健康や成長を支えるため、産前産後健診、子どもたちへの予防接種などを行うほか、家族計画カウンセリングも実施しています。(写真:新生児健診に訪れた避難民©日本赤十字社)
活動実績:25万4500回以上の家庭訪問を実施
避難民自らがボランティアとなり、感染症予防や応急手当、栄養に関する知識の普及などを行っています。また、地域の妊産婦の産前産後健診の受診状況を確認して診療所へ紹介したり、慢性疾患の患者さんが健康的な生活習慣を維持できるように診療所と連携した活動を行うなど、地域に包括的な保健医療サービスを提供するための草の根での活動を担っています。(写真:健康啓発活動の様子©日本赤十字社)
活動実績:13万7300人以上が活動に参加
ミャンマーへの帰還の見通しも立たず、また制限の多い避難民キャンプでの生活は、避難する人たちの心に大きな負担となっています。心理社会的支援では子どもから大人までを対象に、各世代の興味や生活に即したプログラムや個別の心理的応急処置などを通して、先の見えない日々への不安を軽減し、自己肯定感や地域でのつながり意識、そして希望をもって生きるための支援を続けています。(写真:子どもたちのセッションの様子©日本赤十字社)
【避難民キャンプでの活動の様子】動画
令和4年度(2022年度)日本赤十字社バングラデシュ現地代表部首席代表(当時)の清水看護師によるレポートです。 |
♦診療活動の様子♦
♦地域保健活動(CBHFA活動)の様子♦
♦心理社会的支援(PSS活動、こころのケア)の様子♦
これまでの日本赤十字社の活動
2017年8月25日 ミャンマー・ラカイン州での衝突
ミャンマー・ラカイン州での暴力の発生後、隣国バングラデシュ南部へ避難民が流入。わずか2カ月程の間に避難をした人は約60万人にのぼり、バングラデシュ赤新月社は着の身着のまま避難してきた人々の救援活動を開始しました。
2017年9月 緊急医療チームの派遣
2017年9月、日本赤十字社は現場のニーズに応えるため緊急医療チームを派遣することを決定しました。2018年4月までの8カ月間、日本赤十字社から派遣された同医療チームはバングラデシュ赤新月社の医療者等と協力してキャンプ内4カ所で避難民の命を守る巡回診療等を行いました。2017年12月にはレントゲン撮影や簡単な手術ができる仮設診療所を開設し、バングラデシュ赤新月社や避難民ボランティアと共に質の高い医療の提供を開始しました。※詳しくはこちらをご覧ください。
2018年5月 中期保健医療支援事業を開始
バングラデシュにおける避難生活が長期化の様相を呈していたことから、2018年5月、日本赤十字社はバングラデシュ赤新月社と共に、避難民と地元コミュニティの自助や共助及びレジリエンスの強化を目的とする中期保健医療支援事業(第一期)を開始しました。バングラデシュ人の医療者の育成や医療施設の整備に力を入れると同時に、避難民がボランティアとして地域の人びとの健康促進に取り組む活動(地域保健活動)を開始しました。
2020年4月 新型コロナウイルス感染症拡大と事業への影響
2020年初頭から世界全体に広がった新型コロナウイルス感染症の影響により、同年3月には日本赤十字社から現地へ派遣されていた日本人職員3名全員が帰国を余儀なくされました。その間は、日本からの遠隔サポートで様々な課題を解決しつつ、バングラデシュ赤新月社の医療者等と避難民ボランティアの80余名が力をあわせ、医療と保健サービスの提供を継続することができました。
2022年4月 中期保健医療支援事業第二期を開始
保健医療支援を継続する中で、慢性疾患患者や精神的不調を訴える患者の受診が増加する傾向にあります。2022年4月からは、2025年3月までの3カ年の第二期事業を開始し、診療所における母子保健を含む保健医療サービス提供の継続、避難民ボランティアによる地域保健活動の実施、診療所、地域保健並びに心理社会的支援の連携による包括的な患者支援体制の整備等を通じて避難民が安心で健康的な生活を送ることができる環境の整備を目指しています。
これまでの日本赤十字社からの人的貢献(国際要員の延べ派遣人数)※2023年10月末時点
緊急救援 |
2017年9月~2018年4月 |
110人 |
中長保健医療支援事業第一期 |
2018年5月~2022年3月 |
48人 |
中長保健医療支援事業第二期 |
2022年4月~ |
10人 |
国際赤十字の支援
国際赤十字・赤新月社連盟を通じた緊急救援アピール(英語)
国際赤十字・赤新月社連盟はバングラデシュ南部の避難民支援のため緊急救援アピール(資金援助要請)を発表しており、支援ニーズの長期化に伴って数度の支援規模の改定を行い、現在は総額約337億円規模(1億9825万スイスフラン。支援期間2017年~2027年)の支援を国際社会に要請しています。日本赤十字社は連盟の同アピールに対して、避難民を受け入れる現地のホストコミュニティ支援も含めて合計約6400万円の資金援助を実施しています。なお、バングラデシュ赤新月社が日本赤十字社を含めた国際赤十字と実施しているバングラデシュ南部避難民支援は、同アピールで示された戦略・事業計画等に沿って行っているものです。(2024年8月時点レート)
緊急救援アピール(2024年7月25日付) |
緊急救援アピール活動報告(2024年7月9日付 #20) |
バングラデシュとミャンマー双方での支援展開
国際赤十字はミャンマー・ラカイン州でも支援を行っています。移動が制限されたり、山間部などのアクセスが悪い場所に住んだりしているために、学校や病院等に行けない人びとに対し、赤十字は地域のボランティアの力を借りながら支援を続けています(写真©ICRC)。
海外救援金の募集:避難民への継続したご支援をお願いいたします。
日本赤十字社は、ミャンマーからの避難民の心身の健康と尊厳を守るため、支援活動を行っています。皆さまの温かいご支援・ご寄付をよろしくお願いいたします。
バングラデシュ南部避難民支援事業へお寄せいただいた海外救援金の受付状況
救援金受付期間:2017年9月22日(金)から 2025年3月31日(月)まで
1億5,781万3,767円(2024年1月31日現在)
※日赤へのご寄付は、税制上の優遇措置の対象となります。詳しくは税制上の優遇措置をご覧ください。