【献血連載】小さな積み重ねが、やがて大きな実になる 献血ハートフルストーリー vol.10
●今月のひと
日本赤十字社
東北ブロック血液センター
所長
柴崎 至(しばさきいたる)さん
時としてそれなくしては命をつなげないもの。それが献血による血液から造られる血液製剤です。現在私は東北ブロック血液センタ-の所長ですが、以前は現場第一の外科医でした。その経験の中で、輸血は抗がん剤治療のような、いわゆる根治療法ではないけれど、苦しい闘病を続ける方々に生きる力を与えるものだと実感していました。このまま臨床医として患者と向き合っていく人生だと思っていましたが、ご縁があり2013年に青森県赤十字血液センタ-所長、2021年に現職を拝命、「安全な血液を、安定的にお届けすること」が最大の責務であると真摯に向き合っています。
実は、血液センタ-所長に就任後は、穏やかに過ごせると妄想を抱いていました。年齢を重ね、寝る間も惜しむ外科医のハードスケジュ-ルに心身の限界を感じていたので…。しかし、献血を取り巻く状況を知るにつれ、何とかせねばとの思いに至りました。全国で若年層の献血者不足が進行していますが、東北は少子高齢化に加え、若者の転出によってその課題が顕著です。口下手な外科医だった自分が、気づけばまさかのトップセールスマンのように渉外活動へ出向き、協力団体と交渉し、献血セミナ-を増やし、現場では献血者とふれあい、啓発活動にいそしむ。献血バスに乗り込んでどこにでも向かいます。高校生献血に力を入れていると「いずれ地元を離れる若者を育てても…」という意見もありますが、「全国どこに行っても献血に協力してくれればいい、全体の献血者が増えることが大事」と意を強くしていました。
医者として「現場」の人間でしたが、いつの間にか献血でも「現場」に飛び込んでいました。やるべきことをしっかりと、今、目の前の小さなことを積み重ねていくことが、未来の献血を支えていくと信じています。
【赤十字NEWSオンライン版 TOP へ】