高円宮妃殿下ご臨席のもと日赤創立の志 再び
オリジナル色打ち出し多彩な催し
創立130周年を迎えた日赤福井県支部は7月24日・25日、日本赤十字社名誉副総裁高円宮妃殿下のご臨席のもと記念行事を開催した。
地元の偉人で、日赤病院(当時博愛社病院)の初代院長だった橋本綱常先生の生誕日である24日には、綱常先生の胸像除幕式を同県支部西側に隣接する福井赤十字病院前庭で開いた。式には名誉副総裁をはじめ、大塚義治日本赤十字社副社長、知事でもある西川一誠支部長や、神奈川県茅ヶ崎市在住の綱常先生のひ孫、橋本長茂さん(69歳)、橋本家の菩提寺が校区内にある福井市足羽小学校の児童ら40名が出席して行われた。日本赤十字社の父と言われる佐野常民のことは、日赤職員なら誰も知るところであるが1883年、スイスジュネーブで開かれた第3回万国赤十字総会に日本の医師として初めて出席した綱常先生が、日本に赤十字社が創立することを危惧し疑念を持つ者ばかりの出席者に対し、赤十字の精神が日本の精神と道徳の根底と同一であるゆえんを説き、日本が断じて欧州諸国に劣っていない実情を強調して日本赤十字社が誕生したことはあまり知られていない。また、福井市民の誰もが知る啓発録の著者で幕末の志士・橋本左内先生のことは、左内顕彰会ができたり、中学3年生になると立志式を行い左内先生の生き方を学んだりするほど左内先生を偲び敬っている福井市民でさえも、その実弟である綱常先生のことはあまり知られていなかった。こうしたことから日赤福井県支部では、綱常先生の功績を広く知ってもらおうと数年前から働きかけてきたが今回、福井赤十字病院の野口正人名誉院長からのご寄付もあって胸像を作製することとなった。そしてこの日、寄贈者の野口名誉院長や大塚副社長や長茂さん、足羽小児童ら6名で高さ60センチのブロンズ像を除幕した。同県支部の招きで出席した長茂さんは、「祖々父のことはよく知らないが、日赤福井県支部が祖々父のことをここまで思い、胸像まで作ってくださったことに感慨深いものがあります。祖々父は医学医術以外はまったく眼中になく、衣服の着脱も爪を切るのも人任せだった。ただ貧しい者の治療には寝食を忘れて対応したと評論家が話されていた。今日お招きいただいたことに一族としてうれしく心から感謝します」と綱常先生の人柄を紹介し、謝辞を述べた。続いて足羽小6年生の中村旺生(おうき)さんと服部円香(まどか)さんは、「人道博愛の精神にのっとり、命と健康を守ります」「人のため、社会のために尽くす責任を自覚し、実行します」「広く世界の青少年と交流し、仲良く助け合う精神を養います」と、大きな声で誓った。
このあとがん患者が入院する福井赤十字病院の緩和ケア病棟をご訪問になった名誉副総裁は、談話スペースにいた患者らに腰をかがめながら「お加減はいかがですか。よくお休みになれますか。お大事になさってください」とお声をかけて回られた。6月から利用している50代の女性は、「食事や睡眠のことなど、一つ一つ気遣って優しい言葉をかけてもらいありがたい」と感謝していた。
その後、全国では例を見ない駅壁面が恐竜にラッピングされ、駅前には恐竜たちがそびえ立つ「恐竜広場」に移動し、鳴き声とともに首が動く「フクイティタン」などのモニュメントや恐竜足跡の化石の複製などを見て回られた。
またご夕食会には総勢200人を超える県内赤十字関係者が名誉副総裁を歓迎。全米チアダンス選手権5連覇を果たし、彼女たちの活躍をモデルにした映画「チアダン」が昨年に公開したり、現在テレビ化されて番組放映中にもなっている福井商業高校チアリーダー部JETSが迫力あるダンスを披露したり、日本赤十字社最初の外国人難民支援活動として日赤福井県支部(当時委員部)が行った「人道の港」と呼ばれた地での活動を、日赤敦賀市地区長の渕上隆信敦賀市長さんが紹介した。
25日には福井市のフェニックス・プラザで記念大会が開かれ、出席した県内各地の赤十字奉仕団員ら1600人が、「福井県支部は災害救護やボランティア養成などに積極的に取り組んでいると聞き、心強く思います」との名誉副総裁のおことばを受け、被災地支援など活動の発展へ決意を新たにした。大会では、壇上で名誉副総裁から有功章を受け取った受章者らは、「今後とも福井県支部に貢献していきたい」と力強く話されていた。受章者のうち、名誉副総裁からお声かけをいただくことでお会いすることを楽しみにしていた76歳の女性が先日、急きょ容態を悪くして亡くなり、夫が遺影を胸にお声かけを受けた。遺族の夫は「温かなお声かけをいただき、福井県支部のご配慮に感無量です。早速、家に帰って仏壇の妻に報告します」と話された。また東日本大震災で日赤福井県支部が長く救護活動を続け、今なお交流が続く宮城県石巻市の保健師、看護師らが体験発表を行い、当時を思い出し時おり声をつまらせながら福井県支部への感謝を話す看護師らに会場の涙を誘った。
このあと大勢の人の拍手と歓声で見守るなか名誉副総裁は、笑顔で手を振りながら大会会場をあとにし、福井県児童科学館(エンゼルランドふくい)をご訪問になった。名誉副総裁は、宇宙や科学の謎を楽しく学べる施設をご覧になり、実験に挑戦する小学生にも話しかけられた。夏休みの宿題の進み具合を尋ねられた児童が「まだ1ヶ月あります」と答えると、名誉副総裁は「そう思ってるとあっという間に終わるわよ」と和やかに話された。案内した欠戸郁子館長は「気さくに子どもたちとも接しられ、子どもたちへの声かけもすごく自然で、その人柄に緊張していた私も自然に溶け込むことができました」と話していた。
福井県支部の記念行事に参加した日赤秋田県支部の高橋真総務課長は、「福井県支部の大会は、オリジナルのスタッフシャツも作成してみんなをおもてなし、食事や130年のあゆみ映像、JETSのダンスや今秋開催の福井国体のPR、福井の男声合唱団の公演など福井県ならではものを感じた。こんな大会もあるんだ」と感心を寄せ、「幸せ満足度・日本一の福井県」を実感していた。
腰をかがめながら患者に和やかに話しかけられる名誉副総裁高円宮妃殿下(福井赤十字病院にて)
最後まで来場者に手を振りながらにこやかに応える名誉副総裁高円宮妃殿下(フェニックスプラザにて)
除幕の様子
除幕式で謝辞を述べられる橋本長茂さん
中村旺生さん(左)と服部円香さん(右)が誓いの言葉
被災者の発表と復興ソングに会場の涙を誘う
福井国体PRで第1部を締めくくる
男声合唱団ゴールデンエイジふくいの公演
最後は小林正明事務局長からお礼の言葉