国際人道法の普及、離散家族の支援、核兵器の廃絶等
国際人道法の普及
国際人道法は、紛争の影響を最小限に抑えることを目的とする紛争時に適用される国際的なルールの総称です。
日本赤十字社は国際社会の一員として、赤十字国際委員会(ICRC)駐日事務所や関係省庁とも協力して赤十字のルーツである国際人道法の普及を行っています。
また、国際人道法に関連する以下の諸課題についても取り組んでいます。
離散家族の再会等支援
紛争や災害が発生すると、混乱の中、家族が離れ離れになり、所在が分からなくなることが数多くあります。ジュネーブ条約に基づき、そうした人々の安否調査を行い、家族が再び互いに連絡がとれるように、また、再会できるようにすることも、赤十字の重要な役割の一つです。
世界の赤十字では、ICRCを通じて紛争などで連絡手段を絶たれた人々や抑留された人々が離れた家族と連絡をとる支援(赤十字通信)を行っています。
日本では、武力攻撃事態等における外国人の安否調査について「国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)」で日本赤十字社が担うべき業務として規定されています。日本赤十字社では災害時や武力攻撃発生時に、国内に在住・滞在する外国人の安否調査が実施できるよう、ICRCや各国の赤十字社と連携・協力し、安否調査の体制を整備しています。
核兵器の廃絶
赤十字は、第二次世界大戦以降、人道的観点から核兵器と向き合い、核兵器が二度と使用されないよう、廃絶を世界に訴えてきました。2011年には「核兵器の使用は国際人道法の定める理念と両立しない」「もし核兵器が使用された場合、その結果に対応できる人道的援助能力は欠如している」との訴えを各国政府に向けて発表しました。昨今、核兵器の廃絶に向けた国際社会の動きが進展を見せており、2017年7月には核兵器の使用や保有などを法的に禁止する核兵器禁止条約が、米ニューヨークの国連本部で開かれた条約交渉会議で採択されました。2020年10月には核兵器廃絶に向けてその製造、保有等を違法とする同条約への批准・加入が50カ国に達したことから、規定に基づき2021年1月22日に発効。2022年6月にはオーストリアで第1回締約国会議が開催されました。
Health Care in Danger: 危機に立つ医療支援
紛争地域等で赤十字マークを掲げている病院や医療従事者等には、絶対に攻撃を加えてはなりません。このことは、194か国が批准しているジュネーブ条約に明記されています。しかしながら、近年紛争や暴動において、医療従事者や医療施設、医療用車両が攻撃の対象となる事例が多発しています。医療従事者や施設への攻撃は、医療従事者自身の尊い命が奪われるだけではなく、本来であれば医療従事者によって救助されるはずであった多くの命を失うほか、地域医療が何年にもわたり機能しなくなるという深刻な結果をもたらしています。
学校教育における国際人道法
武力紛争や暴力的行為は世界中にまん延し、その影響は青少年にも及んでいます。暴力の影響に若者の高い感受性は敏感です。直接的ではなくともメディアを通じたさまざまな暴力性にさらされています。国際人道法の学習は間接的に平和に導く効果を発揮します。赤十字は国際人道法の学習を通じてすべての青少年に人間の命や尊厳の大切さを伝えています。