信頼される赤十字をすべての国に~人道支援の基盤づくりの取り組み~

赤十字は世界190の国と地域で、それぞれの国で必要とされる人道支援を行うため設立されていますが、組織の大きさや能力はさまざまです。例えば日本赤十字社(以下、日赤)が約140年の歴史を持つ一方、最も若いツバル赤十字社は2015年に正式に認められたばかりです。

より効果的で継続性のある支援を人びとに届けるには、それぞれの国の赤十字が組織基盤を整え、より良いサービスを国民に提供できる能力を高めることが重要です。190の赤十字は、そのネットワークをいかして、特に設立間もない社をサポートしながら互いに支えあっています。日赤が支える2つの赤十字社をご紹介します。

独立間もない東ティモール

EastTimor1.jpg EastTimor2.jpg

左 長期戦略づくりに取り組む東ティモール赤の職員、ボランティア、会員@IFRC

右 東ティモール赤の総会の開催を支えた青少年赤十字ボランティアと喜田要員(中央)@IFRC

東ティモールは、インドネシア東部ティモール島の東部に位置し、かつてポルトガルの植民地、第二次世界大戦中の日本軍による占領、インドネシアによる統治などの歴史を経て、2002年に独立。独立後、約15年が経ちますが、多くの社会的な課題を抱え、洪水、土砂崩れ、強風等の自然災害多発地域でもあります。

東ティモール赤十字社(以下、東ティモール赤)は独立2年前の2000年に設立され、2005年に正式に赤十字社として認められました。日赤は、新しく生まれた東ティモール赤が、災害や健康問題の対応といった赤十字の使命をしっかり果たせるよう、2007年から支援をしています。2013年から2015年の2年間は喜田要員を派遣し、長期戦略や組織体制づくりなど、東ティモール赤の抱える課題に寄り添って支援を行いました。

災害対応の力を高める

Moldive3.jpgのサムネイル画像

デング熱対策の啓発のため戸別訪問をする東ティモール赤職員(右、中央)@IFRC

2015年は、東ティモール赤の災害対応チームに対し、救急法、水上安全法の研修を実施しました。チームのメンバーが水上安全法を受けるのは初めて。一カ月にわたる水泳の特訓を経て、水上で人命救助する方法を学びました。

また、同年流行したデング熱に対する活動を支援。東ティモール赤職員が、1361人に戸別訪問を行い、パンフレット等を用いて予防啓発活動を行いました。また、地域行政と連携し、首都ディリ市とオエクシ県の学校で、700人の生徒に啓発活動を実施しました。

国民の期待を背負って誕生、モルジブ赤新月社

モルジブ共和国は、スリランカ南西のインド洋に浮かぶ26の環礁や約1200の島々からなる国です。モルジブ赤新月社(以下、モルジブ赤)は、2011年に赤十字の仲間入りを果たしました。 モルジブ赤が設立される契機となったのは、モルジブに108人の犠牲をもたらした2004年のスマトラ島沖地震・津波災害。その時、世界各国から集まった赤十字が、被災したモルジブ国民にいち早く支援を届け、緊急救援から復興まで切れ目のない支援を行った姿を目にしたモルジブ国民自身が、自分たちの国にも赤十字を作りたいと訴えたことが、設立につながりました。

散らばる国土に支援を届けるために

Moldive4.jpg

砂袋に砂を詰めるター支部の災害対応チームメンバー@IFRC

日赤は、2010年からモルジブ赤を支援。気候変動の影響を強く受け災害多発国であるため、災害対応能力の強化と、その活動の担い手であるユースの育成に特に力を入れています。

島や環礁からなり立つ国土のため、災害が発生した際に遠方から支援を届けるのは至難の業。そのため、モルジブ赤は、国の全土に散らばる10支部のそれぞれに災害対応チームを作り、各地域で素早く、効果的に支援を届けられる体制づくりを目標に掲げます。2015年には、災害対応チーム育成のために計5回の研修が行われ、90人が参加。育成されたメンバーが様々な場面で活躍しています。

Moldive5.jpg

豪雨で被害を受けた屋根の修繕を行うセエヌ支部の災害対応チームメンバー@IFRC

モルジブ中南部に位置するター環礁では、2015年9月に波浪注意報が発令。管轄するモルジブ赤ター支部は、ただちに関係機関と調整会議を実施。ター支部の災害対応チームが、砂袋に砂を詰め、必要とされる場所に運び災害に備えました。

モルジブの最南端に位置し、23の島々からなるアッドゥ環礁では、2015年11月に豪雨に見舞われました。モルジブ赤セエヌ支部が派遣した災害対応チームは、住民の安全確保や被害を受けた家屋の屋根の修理等にあたりました。

赤十字の全ての事業において、活動を通して支援先の赤十字の組織を強化するという考え方は共通しています。事業終了後も活動が根付いていくために、その国の赤十字社が自らの力で事業を続ける力をつけることが必須だからです。

また、各国の赤十字が効果的に組織を強化できるよう、国際赤十字・赤新月社連盟では、組織の能力評価や長期戦略づくりの手法などの開発や研修を通して各社を支援しています。各国の赤十字がそれぞれの力を最大限発揮し、赤十字全体として人道支援分野において大きなインパクトをもたらす。これが私たちの使命です。

本ニュースの印刷用PDF版はこちら(762KB)