ネパール:包括的な支援を通じて生活再建を支える

ネパール全土地図

日本赤十字社(以下、日赤)は、2015年4月25日にネパールで発生したM7.8の大地震発生直後から、被災した14郡のうちでも最も被害の大きかったシンドパルチョーク郡にて緊急支援を実施し、その後も同郡で復興支援活動を継続しています。今号の国際ニュースでは、日赤が取り組むネパールでの復興支援活動の概要をご紹介します。

復興支援活動の中心は「4+1(フォー・プラス・ワン)」

2016年12月にシンドパルチョーク郡の住民や行政職員対象に開かれた日赤の復興支援活動説明会の様子

ネパール赤十字社は、被災地の復興および被災者の生活再建を目指し、①住宅再建、②生計支援、③水と衛生、④保健の4つの分野を活動の根幹と定めました。それら4つの分野にネパール赤十字社の組織強化を加え、ネパール復興支援は「4+1(フォー・プラス・ワン)」と呼ばれる活動が中心となっています。

日赤は、先行して実施していた4棟の診療所再建などの活動と並行して、ネパール赤十字社と共同で行った被災者からの聞き取りや統計調査を基に、「4+1」を中心とする復興支援活動の詳細について協議を重ね、2016年11月にネパール赤十字社と包括協定書を締結しました。

日赤による主な復興支援活動(予定)

支援分野

主な支援内容

支援金額

住宅再建支援事業

・約1500世帯への住宅再建補助金の支給

・住宅再建にあたっての技術支援

5億2500万円

地域保健再建事業

・14村での診療所再建(4村で先行実施)

・8村での地域保健再建事業

1億6000万円

水と衛生、生計支援事業

・個人住宅や学校のトイレの設置支援

・安全な水の共有設備の修復

2億円

血液センター支援事業

・血液センターへの資機材供与、技術支援

5000万円

学校再建事業

・小学校の校舎再建、修復、防災教育

1億円

ネパール赤十字社

能力強化支援事業

・人材育成、復興支援に必要な設備支援

5000万円

※支援活動の一覧は以下ウェブサイトをご覧ください。

http://www.jrc.or.jp/activity/international/news/170120_004643.html

いよいよ始まった住宅再建

住宅再建巡回指導の様子

復興支援活動の中で、最も大きな取り組みの一つが住宅再建支援です。ネパール政府は、各国の援助機関等の支援を受け、対象世帯を認定したうえで、住宅再建のための補助金を支給することを決めています。日赤は、シンドパルチョーク郡内の2村(タンパルダップ村、タンパルコット村)の約1500世帯を対象に、補助金の支給を支援しています。

両村では2016年9月に補助金の支払いが始まり、少しずつ再建に取りかかる世帯が増えてきています。補助金は、ネパール政府が承認した耐震建築基準を満たす設計に沿っていることを条件に、分割で支給されます。ネパール赤十字社は、住宅再建支援チームを作って村を巡回し、技術的な助言をしたり、行政窓口との橋渡し役を務めたりしています。一方、日赤は、担当職員が定期的に事業地を訪れ、チームメンバーに巡回指導の際の留意点や助言内容を指導しています。

生活再建をいかに支えるか

ネパール政府は、住宅再建にあたり、地元で手に入る石やがれきを資材として活用することを奨励しています。しかし、住宅の倒壊で家族を亡くした人々のなかには、辛い経験を思い起こすがれきとは別の資材を探し求める人もいます。また、石材を用意するための労力や道具が不足しているために、石材よりも高価なレンガを遠方から調達せざるをえない人もいます。そして、日赤の事業地のような山村に暮らす人々にとっては、資材の運搬費も大きな負担になっています。

資材運搬費は山村に暮らす人々にとって大きな負担

このような状況下での住宅再建には、補助金だけでは十分ではなく、安定した収入源の確保も必要です。シンドパルチョーク郡では、震災で水田が枯れてしまったり家畜を失ったりして、安定した収入を得られなくなった世帯も少なくありません。日赤は、そのような被災者に、種子や家畜購入費の支援、灌漑設備の補修や収穫作物の貯蔵庫建設などを通じた生計支援を実施する予定です。さらに、個人住宅や学校のトイレ設置、公共の飲料水設備の修復などにも取り組み、安心・安全に暮らせる地域づくりを目指します。

復興への道はこれから

今年4月の震災2周年を控え、復興への取り組みの基盤が整いつつあります。力強く生きるネパールの人々の笑顔のために、日赤は、ネパール赤十字社などと協力しながら、これからも、シンドパルチョーク郡での活動を続けていきます。

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