世界の防災・減災に向けて ~アジア防災閣僚級会議に参加~
7月3日から6日にかけて、モンゴル・ウランバートルにおいてアジア防災閣僚級会議(政府間会議)が開催され、日赤から2名の職員が参加しました。この会議は、2030年までの防災分野の行動指針である「仙台防災枠組(Sendai Framework for disaster risk reduction)」の実施状況や推進方策を議論することを目的に、2年に一度開催されるアジア地域の防災閣僚級会議です。
今回は、モンゴル政府と国連国際防災戦略事務局(UNISDR)が共催し、「災害によるリスク軽減(減災)、持続的開発の維持」をテーマに、域内政府代表、国連やNGOなどの関係者が集結し、方向性の確認や、短中期目標の設定を協議しました。
赤十字は草の根の「地域コミュニティ」の代弁者として発信
この会議において、赤十字は主要な「ステークホルダーグループ」の一つとして登録されており、テクニカルセッションに公式に意見を出すことが出来る立場にあります。赤十字の代表は、閣僚級会議に先立って事前会議を開催し、赤十字としてどのようなメッセージを世界に発信していくべきかを協議しました。
各国の赤十字社は、ボランティアに支えられた草の根の組織であると同時に、政府の補助機関でもあり、自国政府と地域社会の橋渡しを行いうる特異な地位を確立しています。国際的な目標や枠組みにおいて、もっとも脆弱な立場にいる人々の代弁者として、彼らの声が政策に反映されるよう、各国政府や国際社会に働きかける「アドボカシー活動」も、私たちの重要な責務です。
今回、赤十字は世界に向けて、以下のメッセージを発信しました。
① 地元のレジリエンスを強化するために、地域コミュニティを支援すること。
② 地球規模の気候課題や防災コミットメントを地域コミュニティでの行動とその恩恵に移行していくため に地域の仕組みに投資すること。
③ 災害時に支援が必要な方々をより確実に守るため、防災政策とその実践を強化すること。
④ 「早期警報、早めのアクション」を強化すること。
⑤ 災害による移住を防ぐため、また対応を準備するために防災イニシアティブを強化す
ること。
⑥ 都市部での防災への投資を強化すること。
今回、3000人近くの会議参加者全員に、赤十字が取り組んできた防災・減災のケーススタディ集(概要版)が配布され、大きな反響を呼びました。正式版は以下からダウンロードできます:
http://media.ifrc.org/ifrc/wp-content/uploads/sites/5/2018/06/DRR-in-Action-Case-Studies-FULL-Final-v2-1.pdf
なお、この事前会議は、モンゴル赤十字社の青少年研修センターで開催されました。この研修センターは、日赤を含む各国赤十字社からの支援を受けて、一昨年完成した施設です。首都ウランバートルから車で1時間半ほどの平原にあり、参加者は地元の家(「ゲル」)を模した施設に宿泊しました。
日赤の原子力災害対応に関心が集まる
東日本大震災及び福島第一原子力発電所の事故を経験した日赤は、こうした会議において、その知見と教訓の共有を行うことで、国際的に貢献をしてきました。
今回の会議では、サイドイベントにおいて、「7年が経った福島の今」と題したプレゼンを行いました。今の福島の様子を報告するとともに、現在行っている活動を紹介したほか、福島第一原発事故時、放射線影響下で救護活動が出来なかった経験をもとに、原子力災害対応に関する活動基準を作成したことや、要員を養成する研修会を開催してきたことを報告しました。
原子力災害についての経験や対応については、アジア地域でも大変関心が高く、「日赤の原子力災害情報センターでは何をしているのか?」や、「どんな研修を行っているのか?」などの質問もあり、活発な議論がなされました。
世界の防災・減災を進める人道支援アクターとして
世界191の国や地域に展開している赤十字は、大勢のボランティアの力を得て、草の根のコミュニティ活動を強化し、世界の防災・減災を進めています。これからも、アジアだけではなく、各地域の防災閣僚級会議においても、主要な人道支援アクターとして、呼びかけを続けていきます。