中東: 五十嵐真希と日赤中東地域代表部 アラブのなかの日本の美 ~石の上にも4年!~
東地域: 日本赤十字社(以下、日赤)では、2015年からレバノンの首都ベイルートに中東地域代表部を設置して、中東での支援に力を入れています。首席代表を務める五十嵐真希がこれまでの歩みを振り返ります。
中東と日本
日本から見る中東は、遠い存在かもしれません。しかし、美しさへの探求心が強いアラブの国々では、実は、日本文化(桜、漫画(マジンガーZ、キャプテン翼)、ハローキティ、抹茶キットカット、寿司など)を愛する人は多く、トヨタ、ソニーなど技術大国として憧憬を抱き、こちらが驚くほどの日本熱が、あちらこちらにあふれています。その心地よさの中で、「ジャパン・ナンバーワン(日本一番!)」と偶像化された「日本」が、その期待を裏切らない支援をどのように展開できるか?長年中東で支援を続けてきているヨーロッパ諸国からの支援とは違う日赤にしかできない支援をするにはどうしたら良いか?複雑な中東文化と歴史、迷走化する政治情勢の中で、どのような立場で支援することができるのか?
中東地域を舞台にして
多くの疑問と熱い想いの中で、日赤が、現在の中東危機に包括的な取り組みを開始したのが、2015年。2011年のアラブの春、シリア危機が始まってから4年目。東日本大震災と同じ時間を共有し、東北では復興をめざしていた時、中東では、イエメン内戦も勃発し、情勢は混沌となる一方でした。「中東は、新参者や女性には、なかなか厳しい」と言われながらも、当時、たった一人で、わからないアラビア語に囲まれながら日赤中東地域事務所の立ち上げと兼務する形で赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)中東北アフリカ地域事務所の緊急救援部と保健部の構築に奔走しました。
あれから4年、連盟保健部は連盟内で独立した部署となり、スタッフも2名から6名体制となり、保健部唯一の財源である日赤からの事業費支援を基盤に、中東・北アフリカ諸国の医療、地域保健、緊急時の公衆衛生、水・衛生、こころのケアなどの技術支援と現地赤十字・赤新月社スタッフの能力強化を通じて、国連の持続可能な開発目標の達成へも貢献しています。一方、日赤中東地域代表部としても、医師、看護師を含む7名(レバノン、ヨルダン)、現地職員1名(レバノン)の大所帯となり、パレスチナ赤新月社との医療協力支援、レバノン赤十字社との水・衛生と学校防災事業、連盟を通じての中東5カ国(シリア、イラク、イエメン、パレスチナ、ヨルダン)への支援を行うまでになりました。
これまで、難民支援を中心に「人、資金、技術」をバランスよく、日赤の強みである(医療のプロ)を生かしながら、変化するニーズに柔軟に対応し、質の高い支援を実現しています。また、長期化する紛争への緊急救援(シリア、イラク、イエメン)、忘れ去られた難民支援(パレスチナ)、そして、多くの難民たちを抱える周辺国(レバノン、ヨルダン)への支援が、包括的に、支援が必要なすべての人々(難民、国内避難民、受け入れ国の住民)に届くよう日々努力しています。昨今は、現地赤十字社のみならず、そこに支援に来ている他国の赤十字・赤新月社への技術支援の提供や、日本大使館や国連などがその地で行う援助の調整役も担うようになっています。
相手を敬い、文化を尊重し、真摯に笑顔で活動する
中東に足を踏み入れるために、直接向かい合い話す時間と飲み交わしたアラビアコーヒーは数知れず。中東における問題がいかに複雑であるかを理解し、彼らのロジックを感じ、お祝いの場でのダンス「ダブケ」をマスターし、アラビア語で挨拶ができるようになり、アラビア料理を堪能することで、仲間・家族として受け入れてもらうのに2年。日赤の柔軟性と組織力、寄り添う支援を行う日赤要員の謙虚さ、忍耐力、勤勉さで、信頼関係を創り、中東での日赤の様々な支援が、重要な立場を確保するのに更に1年。中東支援4年目の今、チーム力、相手を敬い、文化を尊重し、真摯に笑顔で活動する姿は、日本からの支援の美学として、ここ中東で受け入れられつつあります。
シュクラン!(ありがとう!)
※動画で日赤中東地域代表部の活動をぜひご覧ください。(約9分)
【日本赤十字社】パレスチナ・シリア難民への支援~レバノン中東地域代表部からの報告~
https://www.youtube.com/watch?v=g5WWAG_E8SQ
"中東人道危機救援金 募集中"
http://www.jrc.or.jp/contribute/help/cat751/