インド:人々の衛生意識を変える
陽気な音楽とダンスにのせて、道路に捨てられたごみを拾ったり、「ポイ捨て」を止めたりする人々の動画。これは、インド政府主導の「スワッチ・バラート(きれいなインド)政策」の一環です。また、同政策の中でインド政府は、2014年から2019年までの5年間で1億2千万世帯にトイレを設置し、屋外排泄をゼロにすることを目標に掲げました。
実は、日本赤十字社(以下、日赤)がインドで支援している事業はこの政策と関わりがあります。日赤は、国際赤十字・赤新月社連盟及びインド赤十字社(以下、インド赤)と協力し、①結核対策、②孤児院や貧困層のためのクリニックの整備、③学校トイレの建設やボランティアによる衛生活動の普及を行う公衆衛生の3つの支援を実施しています。(あるご夫婦の想いから始まった本支援の詳細は、赤十字国際ニュース「『苦しんでいる人を救いたい』その思いをカタチに」をご参照ください。)今回は、その中でも「スワッチ・バラート」と関連のある、インド北部のオリッサ州で実施する③の公衆衛生事業に焦点を当ててご紹介します。
"きれいなインド"を目指し、衛生環境の改善
2019年12月、日赤職員が支援対象地であるインド北部のオリッサ州をモニタリングのため訪問しました。村の住民は、「この村の100世帯のうち5世帯にしかトイレがないのです」と話します。また、インド赤担当者によると、他の地域でも各家庭にトイレが整備されたものの、外で排泄する習慣がある人々にとっては、トイレがあっても使わないという家庭も多いそうです。
今回、インド赤が主体となって、3つの学校に清潔なトイレを整備するとともに、児童・生徒や近隣住民に対して衛生的な行動や知識について普及する取り組みを実施しました。
学校のトイレは、以前は左上写真のように学校の裏にあり、決して衛生的とは言えませんでしたが、今回の支援により、右上の写真のとおり、学校グラウンドの横に水洗で流せるトイレが手洗い場とともに整備されました。
また、ブラジャラージプール学校では、児童による手洗いデモンストレーションが行われ、近所の大人も見に来ていました。この学校に息子が通うジュヌ・マリクさんは、「このトイレができたら、子どもたちだけでなく、地域住民にとっても大変助かります。手洗い場があるのも大変嬉しいですね。学校のトイレの清掃や維持は、コミュニティでも協力して行いたいと考えています」と語ってくれました。
人々の意識を変え、支援終了後も継続されるように
コミュニティの人々が、手洗いをはじめとした衛生活動の重要性を理解し、衛生的な習慣を身につけるためには、そこに暮らす人々の協力のみならず、行政の協力も欠かせません。
チャデイアパリ学校は、オリッサ州の中心地から遠く離れた山奥にある集落の学校です。この地域は政情不安などにより外部からのアクセスが困難であったため支援が届かず、唯一インド赤のみがこの地を訪れ支援を実施しています。地区長のプロサナ・クマール行政長は、「赤十字が、アクセスの悪いこの地域まで支援してくれて大変嬉しく思っています。政府の学校教育関連の資金を使って、今後もトイレの維持管理を行っていくつもりです」と語りました。
外からの支援を永遠に続けることはできませんが、支援をする中でパートナーであるインド赤やコミュニティの人々、行政が連携し、継続できる形にすることで、支援終了後もコミュニティの人々に衛生的な行動が根付いていくことが期待されます。