笑顔で家や職場に帰るために~国際活動を支える安全管理~
昨年度から2022年8月末までに、日本赤十字社(日赤)から海外に派遣した国際要員は13か国延べ42人。先月ご紹介したウクライナ人道危機での赤十字活動や南スーダンICRC紛争犠牲者救援ミッションにも代表されるように、赤十字の国際活動の現場は、世界の中でも特に災害や紛争、病気等に苦しんでいる地域です。
そのような現場での活動には、派遣されるスタッフ自身の安全と健康を守ることが欠かせません。普段目立つことはなくても、事業を継続する要ともいえる安全管理。今回のニュースでは、国際活動での「安全」の取り組みの一部についてご紹介します。
安全とは? ~Securityと Safetyの違い、ご存じですか?~
セキュリティとセーフティ、日本語ではどちらも「安全」ですが、ニュアンスが異なることをご存じですか?セキュリティは紛争、暴力、犯罪等、人為的な危害や損失から心身や財産を守ること。セーフティは、事故や自然災害のように誰かが意図せずとも起こってしまう危害や損失も含めて、それらを受けず、心配がない状態という意味を持っています。
自然災害の多い日本では、子どものころから、避難訓練などセーフティのための対策を学びます。一方で、セキュリティの対策については、あまりなじみがない方も多いかもしれません。盗難等には気を付けていても、暴動の恐れがある地域での行動計画や、検問を通過するときの注意点について、すぐに答えられる人は少ないでしょう。
セキュリティとセーフティのために何を対策すべきかは、国や地域、時期、状況により異なります。日赤では安全管理担当を置いて、国際赤十字等の関係機関とも連携しながら、派遣国の情報収集やリスク分析を行い、対策を講じています。また、派遣中、万が一何か起こっても即時に対応できるよう、24時間の緊急連絡体制を設けています。
安全管理=安全対策+危機管理
国際要員の安全管理は、「安全対策」と「危機管理」から成ります。「安全対策」は、事件、事故、疾病等を未然に防ぐ、平時からの対策。「危機管理」は、事件、事故、疾病や、災害、感染症の蔓延等による影響が出てしまったときに、その被害を最小限に止め、再発防止を図る一連の対応です。生命にかかわるような重大事案が発生した時の組織的な対応も含まれます。これらを適切かつスムーズに行うため、日赤では、安全管理体制の整備や各種研修等を行っています。
一人ひとりが安全を守る 安全管理研修
すべての日赤国際要員は派遣前に「安全管理研修Ⅰ・Ⅱ」を受講します。研修の目的は、全員が「笑顔でミッションから家や職場に帰ること」。一人ひとりが個人のレベルからも安全を守れるよう、一般的な安全管理の知識はもちろん、日本ではなじみのない銃撃や爆発物、群衆や暴徒等の対応、無線機の扱い方を含め、幅広く学びます。
心身の健康も安全の一部
派遣前、中、後を通して心身の健康を維持することも安全の大事な要素です。そのため、健康診断や予防接種、24時間の健康相談、心のケア、万一の場合の緊急移送などの体制を整えています。また、安全管理研修にも感染症対策やストレスマネジメントの講座が盛り込まれています。
日赤の国際要員にご関心をお持ちの方は、「国際要員ウェブサイト」もご覧ください。