大雨・洪水災害に備える ~事前配備と予測型行動~

 今年の日本も台風や大雨のニュースが多くなってきています。「これまでに経験したことのない風雨」の予報が出たりしますが、「情報収集をして備える」というこの当たり前の行為こそ、あなたやあなたの大切な人の命を守る行動につながります。

 今回は気候変動の影響を受ける様々な自然災害のうち大雨・洪水災害に注目し、日本赤十字社や国際赤十字の取り組みをご紹介します。

異常気象と大雨・洪水災害

 毎年ある程度決まった時期に同じ現象が起こることで、私たちは予測し、備えることが出来ています。しかしながら、近年、気候変動が世界的に広がり、各地でこれまでに例を見ない現象が起こるようになっているのも事実です(参考:気象庁 世界の異常気象)。国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)ではメディアの注目が集まらないような中小規模の災害に備えて、被災国の赤十字が24時間以内に支援を開始できるよう、災害救援緊急資金(DREF) を蓄えていますが、このDREFを利用した自然災害のうちもっとも多いのが大雨・洪水災害であり、DREFの利用件数はこの10年で約5倍に増加しています[1]。とりわけ、アジア・大洋州地域は世界平均と比較して豪雨による影響を最も受けることが予測されています[2]。日本も同様で、気温上昇に伴う様々な予測がなされています(1時間あたりの降水量が50mm以上を超える頻度が高くなる、強い台風の割合が増加、など)。

[1] IFRC GO
[2] Asia-Pacific Disaster Report 2022 for ESCAP Subregions

※日本赤十字社へのご寄付の一部がこのDREFを支えています。

災害時にこそ「安全な水」を人びとに

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給水キットを展開するボランティア©️ラオス赤十字社

 大雨や台風による建物の倒壊や浸水、川の氾濫、インフラの機能不全等、様々なリスクのうち、"安全な水"が入手出来ないことは人びとの健康に大きな影響を与えます。飲料水はもちろん、食材を綺麗に洗って保管する、洗面や歯磨き、小さな子供のミルクや離乳食を作るなど衛生的な暮らしに欠かせないのが安全な水です。不衛生な水を口にすることでお腹を壊して下痢になる等の疾患は水を媒介するウイルスによるものですが、水溜りに生息する蚊を媒介するデング熱ウイルスなどその他のリスクも考えられます。日赤は、2011年度から連盟と協働し、アジア・大洋州地域における給水・衛生災害対応キットの配備に取り組んでいます。このキット一式には、浄水ユニットやタンク、浄水剤、水質検査キット、簡易トイレ設置用資材、衛生教育用の文具などが含まれており、緊急時にはそれらを正しく使えるよう、現地の赤十字社とスタッフやボランティアの研修も実施しています。最近では、災害時の移動や展開が容易である、より小型のキット(1時間あたり700 リットルの浄水が可能)が多く配備され、いざという時のために備えています。

 先月ラオスで発生した台風による大雨洪水災害では、8つの県で家屋の一部水没や道路の通行止め、水や電気の供給が停止し、約42,000人の被災者が出ました。ラオス赤十字社の即時対応を支援するためDREFが利用され、日赤が連盟と協働して配備した給水・衛生災害対応キットも飲料水の供給に役立てられ、衛生資材の配布とともに手洗いや家庭での水の管理について啓発活動も行われました。このような迅速な対応ができた理由は、大雨・洪水の多いこの地域に昨年度新たにキットを配備し、現地語に翻訳されたマニュアルや解説ビデオが作成され、多くの職員・ボランティアが研修を完了していたことに他なりません。給水・衛生災害対応キットの配備は、ネパール、バングラデシュ、東ティモール、ベトナム、インド、大洋州地域(フィジーやサモア)、カンボジア、マレーシアと、広がっています。

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家庭で気をつけるべき衛生的な行動について学ぶ学生たち©️ラオス赤十字社

(昨年度の本事業の最終報告書はこちら)

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災害時に連携する自治体職員に給水キットの使用方法を説明する職員©️マレーシア赤新月社

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水質検査キットについて使用方法を学ぶ研修の様子©️バングラデシュ赤新月社

予測し、備え、災害に強くなる

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、多くの国で人々に行動制限が課せられ各国間での物資輸送に大きな支障をきたしました。いざというときに駆けつける準備はもとより、各国のあらかじめの備えの重要性が改めて浮き彫りになりました。国際赤十字では2030年戦略(2030年までの長期的な戦略)の中で「Anticipate(予測)」し備えることで多くの命を救うことや「Local actor (地元で実践する人たち)」をもっと災害に強くすることを掲げています。近年力を入れている「Forecast Based Action(予測による事前行動)」はその取り組みの一つで、例えばバングラデシュの場合、1年で10%のみ起こりうる洪水が3日以上続く可能性が50%以上となったら、避難警報を出し、人々の避難の誘導、決まった額の現金給付(過去の調査の結果、交通費が払えないことや生活資産を置いて逃げることを恐れて避難が遅れたことなどが挙げられたことを踏まえて)が行われます。

 予測する技術への投資と徹底した備え、防災意識の定着は、人々の命を守るために今後さらに必要になります。あなたも大切な人の命を守るために“今できること“を考えてみませんか。日本赤十字社は世界の“備える力の強化”にこれからも貢献していきます。

本ニュースのPDFファイルはこちら(601KB)

「2022年パキスタン洪水救援金」

受付期間:2022年9月6日(火)~2022年11月30日(水)
使 途 :国際赤十字・赤新月社連盟とパキスタン赤新月社等が実施する洪水災害の救援・復興活動及びパキスタン・イスラム共和国での赤十字の人道支援に使われます。

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