5月8日は世界赤十字デー!そして5月は赤十字月間!

 赤十字は赤十字の創始者、アンリー・デュナン(第1回ノーベル平和賞受賞者)の誕生日にちなんで、5月8日を「世界赤十字デー」と定めていることを皆さんはご存じでしょうか。
 1859年6月、スイス人の実業家デュナンは、イタリア統一戦争の激戦地ソルフェリーノの悲惨な状況を目撃し、「傷ついた兵士はもはや兵士ではない、人間である。人間同士としてその尊い生命は救われなければならない」という信念のもと、町の人々たちと協力して放置されていた負傷者の救護にあたりました。その経験から著書「ソルフェリーの思い出」を執筆し、戦争犠牲者の悲惨な状況を語り伝えるとともに、救護団体や国際的な取り決めの必要性を訴えました。この訴えはヨーロッパ各国に大きな反響を呼び、1864年にはジュネーブ条約(いわゆる赤十字条約)が調印され、赤十字が誕生しました。
 その後、150年以上が経った現在でも赤十字は世界中で日々活動を続けています。
 そんな世界赤十字デーに加え、5月1日は日本赤十字社(以下、日赤)の創立記念日であることから、日赤では5月を赤十字月間とし、2023年は「赤十字は動いている SAVE365」というテーマのもと、皆さんに日赤の様々な活動情報をお届けしています。

■2023年の世界赤十字デーのテーマは#fromtheheart

 世界赤十字デーは、人道主義の精神、そして地域に変化をもたらす一人ひとりを記念する日です。今年は、コミュニティの中で支援が必要な人々に真っ先に手を差し伸べるthe person next door(隣人)にフォーカスを当てています。あまり耳馴染みのない言葉かもしれませんが、例えば、職場の仲間、近所のコンビニの店員さん、赤十字のボランティア、通っているジムやお店の人など、自分が暮らすコミュニティの中でいつもそばで見守ってくれ、あなたが困った時に手を差し伸べてくれる身近な人を指します。そんな人々に思いを馳せて、今年のテーマは「Everything we do comes from the heart」となりました。

画像 2023年世界赤十字デーのキャンペーンカバー

■気持ちが呼び起こす行動

 日赤の国際部あてに皆様から「私にできる支援は何かありますか?」とお問合せをいただくことがあります。そのようなときに「『無関心は人道の敵』と言われます。世界で起きている人道危機について関心を持っていただくことも支援の一つです。」とお答えしています。ウクライナ人道危機、アフリカ食糧危機、感染症のまん延、気候変動など。様々な人道課題がありますが、つながっている世界の中で、関心をお寄せいただき、自分らしい行動をとっていただければと思います。
 核兵器のリスクが深刻化する中、来週5月19日から21日には、世界のリーダーが広島に集い、G7サミットが開催される予定です(追記:2023年5月17日付、G7サミットに向けた赤十字国際委員会総裁と日本赤十字社社長の共同声明)。赤十字は、1945年に広島・長崎に原爆が投下された当日から核兵器に向き合ってきました。自らも被ばくしながらも目の前の人たちを助けようとした人たちの「言葉」をご覧いただき、感じたことを身近な人と共有いただければ幸いです。

核兵器と向き合った者の「言葉」~わたしは赤十字の看護婦だ~

 五條美恵子さんは当時17歳の日赤看護学生で、原爆投下後に広島で救護活動にあたりました。当時、戦時救護のため大半の医療従事者が広島赤十字病院を不在にする中、その不足を補ったとのは五條さんをはじめとする看護学生たちでした。
 「気が付いたときには私は数メートル離れた廊下らしいところに倒れていました。(中略)『私は日赤の看護婦の卵だ、日赤の看護婦だ』と身の引き締まるような戦慄感が全身をはしり、『やるぞ、やらなくては』との気持ちで飛び出しました。」

画像 原爆投下直後の広島赤十字病院

■核兵器と向き合った者の「言葉」~「被ばく」から「運動」へ~

 「わが子をしっかりと抱きしめ眠ったままの姿で死んでいる母親、その母親の乳房にむしゃぶりつき、泣きじゃくっている乳児、死んだ者が苦しかったか、生きている者が苦しいのか、この時から皆の苦しみが始まったのです」
 国際機関のひとつである国際司法裁判所(以下、ICJ)が核兵器に対する見解を示し、核兵器の使用が国際人道法に反すると確認されたのは、1996年になってからでした。
 ICJの見解は赤十字の会議でも繰り返し確認され、2011年の国際会議では日赤長崎原爆病院院長の朝長万左男医師(本人も幼少期に長崎で被爆)が次のように述べています。

画像 2011年の赤十字の国際会議で講演する朝長医師

 「私に原爆当時の記憶はない。(中略)その後私は血液学の専門医として原爆の後遺症を目の当たりにし、核兵器の使用は非道徳的であり国際人道法に反するという1996年のICJの見解に完全に同意するにいたった。(中略)最も悲惨なのは、被爆者が一生耐えなければならない心理的恐怖である。」

 今回ご紹介した内容については、書籍「Dialogue on Nuculear Weapon~赤十字に残る、核兵器と向き合った者の「言葉」~で紹介されています。

 赤十字は今日も明日もあさっても、かけがえのない日常を支える活動を続けています。

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