【速報15】イスラエル・ガザ人道危機:報告会実施。人びとに支援を届ける赤十字のネットワーク

 イスラエル・ガザの間での武力衝突の激化から12 月7日で2カ月が経過しました。人質解放や物資支援が進んだ様子が報道された一方で、残念ながら現在も多くの人びとが住まいを追われ、避難先での過酷な生活環境で必死に命を繋いでいます。また、残された人質の一刻も早い解放が望まれます。

 日々変化する状況の中、イスラエル・ダビデの赤盾社(イスラエルの赤十字社)やパレスチナ赤新月社、エジプト赤新月社、赤十字国際委員会(ICRC)等の職員やボランティアは最前線で救援活動を続けています。当該人道危機と赤十字の活動について、12月7日に報告会(ウェビナー)を開催しました。今回の速報では赤十字の支援の全体像を当日のダイジェストとともにお伝えします。当日の録画については、以下もしくは二次元コードからご覧頂けます。

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赤十字が大事にしていること

 イスラエル・ガザ人道危機対応において、私たち赤十字が大事にしていることは、何よりもまず今苦しんでいる人びとのいのちと健康、尊厳を守ることです。支援を必要としている人びとに少しでも多く支援を届けるために、奔走しています。そして、それを可能するために、赤十字は「公平」「中立」という考えと行動も大事にしています。

赤十字は、今から160年ほど前、スイス人のアンリー・デュナンというビジネスマンが、たまたま居合わせたイタリア統一戦争の戦場で、負傷者の救護に自らあたった実体験から生まれました。赤十字の思想は戦争の現場から生まれたのです。

そして、「敵味方の区別なく救護する」という思想を確固たるルールにしたのが、国際人道法です。

今回の人道危機においても、公平・中立な立場を堅持し、影響を受けている人びとを支え、国際人道法遵守への働きかけを行っています。それは決してどちらか一方の紛争当事者を非難するためではなく、私たちの助けが必要な人を支えるため、人道支援をきちんと届けるためです。

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人質の即時解放を願うイスラエルの人びと©ICRC

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現在のガザの様子。以前は活気ある街並みで人びとの暮らしがあった©ICRC

赤十字のネットワーク:必要な支援を届けるために

 今回のような人道危機においては、支援のニーズは広範・多岐に渡ります。赤十字は大きく3つから構成されており、赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)、各国赤十字社のそれぞれが協力・補完し合いながら活動することで、支援を必要とする人びとに行き渡るよう努めています。

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赤十字国際委員会(ICRCは、イスラエル及びパレスチナ被占領地域ガザ地区・ヨルダン川西岸地区に事務所を持ち、1967年以来半世紀以上にわたって活動を展開しています。今回の人道危機では国際人道法の守護者としての役割と民間人の保護を組み合わせながら、迅速に全体調整を行い対応してきました。国際人道法遵守の働きかけ、人質解放・被拘束者の釈放時の中立な立場としての引渡し支援、緊急保健医療の提供などが一例です。(ICRCの活動に関してよくある質問と回答はこちらご参考下さい)

イスラエルでは、イスラエルの赤十字社であるイスラエル・ダビデの赤盾社が、救急車での負傷者搬送や輸血用血液の確保などの活動を行っています。パレスチナ赤新月社は、ヨルダン川西岸地区ラマラに本社を持ち、パレスチナ難民を支援するために、難民キャンプのあるこのガザ地区や隣国レバノンに支部を持つ形で活動をしています。周辺国ではエジプト、レバノン、シリア、ヨルダンなどの各赤十字・赤新月社が難民流入に備えて準備を行っています。中でもエジプト赤新月社は、ガザ地区と接しているシナイ半島北部での活動をエジプト当局から許可された現時点では唯一の組織であり、国連をはじめとした人道支援団体とも協働し、ラファ検問所を通じた人道支援物資輸送の中心的な役割を担っています(活動の様子はこちらの動画からご覧いただけます)。その他、日本赤十字社等の各国の赤十字社は現地の活動を支えるための寄付を集め、資金援助や人的支援を行うほか、情報発信や国際人道法遵守の働きかけをしています。

また、各国赤十字社の活動については国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)は、各国赤十字社の活動をサポートしています。

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救援依頼連絡に応じるイスラエル・ダビデの赤盾社の職員©MDA

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人道支援物資の搬入行うエジプト赤新月社の職員©ERC

2カ月を迎えてのガザ地区の状況、現地の声

 日本赤十字社は、パレスチナ赤新月社がガザ地区で運営する病院を支援するために、医師・看護師による医療支援事業を行ってきました。10月7日の武力衝突の激化が始まった際、現地で活動を行っていた大阪赤十字病院の川瀨佐知子看護師は、ガザ地区南部への避難や活動を経て11月に日本に帰国しました。現在、通信状況がままならない中、写真と共に送られてくるメッセージには、多くの人びとが避難したガザ地区の南部でも攻撃が激化していること、季節も変わり夜間の冷え込みも厳しくなってきたこと、衣食住に必要な物資がとにかく足りていないこと、衛生環境の悪化による感染症の蔓延が目立ってきたこと、などが綴られています。

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多くの人が密集して避難しているため溢れかえるゴミ

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雨期到来。避難先で水が滞留してしまうこともしばしば

 パレスチナ赤新月社職員のハムディは心境を次のように続けます。

「この気持ちをどう表現すればいいのかわからない。
現状に対する不安と恐怖。
自分たちの、そして子どもたちの将来はどうなるのか。
これだけ多くの子どもと女性が亡くなる耐え難い状況をなぜ世界は許しているのか?」

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パレスチナ赤新月社職員のハムディ

 川瀨看護師は次のように話します。「ひとりでも多くの人を守る、そのために、一人ひとり、そして国際社会が最善をつくすことを心から願います。現地のことや国際人道法のことをを正しく理解し、私たち赤十字の活動を支えて頂けたらと思います」

 すべては苦しんでいる人々のいのちと健康、尊厳を守るために。日本赤十字社は、現地の赤十字・赤新月社を通じて必要な支援が必要な人びとに届けられるよう尽力します。

 みなさまの温かいご支援を引き続きよろしくお願い致します。

「イスラエル・ガザ人道危機救援金」

受付期間: 2023年10月17日(火)~2024年1月31日(水)

使途  : 赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟、イスラエル・ダビデの赤盾社、パレスチナ赤新月社、日本赤十字社が行う救援・復興支援活動等に使用されます。*周辺国等に人道危機が波及した場合には、その対応を含む。

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