ルワンダ:赤十字にとっての給水事業

 日本赤十字社(以下、日赤)は、2019年から東アフリカのルワンダ共和国で「気候変動等レジリエンス強化事業」(以下、本事業)として、住民が主体となって地域の課題に取り組む事業を継続しています。事業の一つとして、対象地であるギサガラ郡で「水がない」という深刻な課題を解決するため、給水設備の設置に取り組んできましたが、様々な困難を経て、今年の4月に完成しました。今回は、給水施設を通じた住民の変化を、日赤ルワンダ現地代表部の吉田拓要員が報告します。

画像 給水設備の前にきれいに列を作って順番を待つ子どもたち©日本赤十字社

■村に水が来た!

 4月12日夜、現地で給水設備の設置を監督している会社から、「水が通った!」と連絡がありました。2021年の工事開始から実に3年を経て設備がおおむね完成し、村の中に設置した給水所から水をくめるようになりました。水栓を開ける前はどこか半信半疑の様子だった住民は、水栓から勢いよく吹き出す水を目の当たりにして、ワッと歓声をあげました。そして、誰ともなく歌い始めた歌が、そこにいた人びと全員の合唱になり、皆で踊り始めました。
 これまで、どれほど我慢してきたのでしょうか。親、祖父母の時代、あるいはそれ以前から、水といえば、傾斜の厳しい、泥まみれの、長く細い山道を、ポリタンクを携えてとぼとぼと歩いて行き、長い列を作って水をくみ、何時間もかけて家に持ち帰るのが当たり前の日常だったのです。水がなければ人は生きていけません。この地域では、男性は生活費を得るために農作業に精を出し、きつく、汚く、危険を伴うのにお金を生み出さない水くみの仕事は、子どもや女性が担ってきました。家の近くで蛇口をひねれば水が勢いよく出てくる日が来ることを、皆どれだけ待ち望んできたのでしょうか。

■1年で29日分の自由な時間

 給水所に水をくみに来た女性に、家を出てから、順番に水をくみ、家に帰るまでの時間を聞いたところ、6分だったことがわかりました。彼女は、今まで毎日2時間かけて水くみをしていたそうです。1日114分の時間が節約できると、1年間で29日分に相当する時間を自由に使えるようになります。そんな世帯が事業対象地の村には約900世帯あります。それぞれの世帯が約1ヶ月分の時間を水くみから解き放されたとき、村に何が起こるのでしょうか。私自身、村がこれから大きく発展する過程を見守れることを期待しています。

画像 家が近いので、ポリタンクをいっぱいにして家路を急ぎます。   ©日本赤十字社

■弱い立場にいる人びとを支えあえる社会を目指して

とはいえ、私たち赤十字の仕事は、水道を作ることではありません。その地域で一番弱い立場に置かれた人びとが、当たり前のように、安心して、水を手に入れることができる場所を作ることです。本事業ではこれまで、村の人びとの暮らしむきを改善するために、牛、ヤギ、ブタなどの家畜を配分し、家庭菜園の設置を支援し、困っている世帯を相互扶助する共同貯金の仕組みを立ち上げてきました。こうした活動の本当のねらいは、住民が自らの力とアイデアで地域の課題を解決し、より強いコミュニティを築いていけるようになることです。そして、そのために、そこに住む人びとがお互いを助け合う行動を習慣づけるためのお手伝いです。日本では給水設備の管理を水道局が担いますが、ルワンダの慣行では、水道を使う住民主体で行われます。給水所を管理する村の人びとは、周囲に住んでいる人びとを思いやって、皆が水をくみに来られるように給水所を管理しなくてはなりません。水が出るようにはなりましたが、私たち赤十字の活動はまだ続きます。本事業が終わるまであと1年間、村の人たちが、お互いを助け合い、一番弱い立場にいる人びとを、自然と支えあえるような社会を作っていくために、ルワンダ赤十字社と一緒に支援をしていきます。

画像 ©日本赤十字社

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