ウクライナ赤十字社の幹部職員が東京と広島を訪問
ウクライナ赤十字社の幹部職員が広島平和記念公園を訪問(写真中央: マキシム事務総長)©JRCS
人道支援への関心を低下させないために
2024年6月19日から25日にかけて、ウクライナ赤十字社(以下、ウクライナ赤)のマキシム・ドツェンコ事務総長とイリヤ・クレツコフスキー副事務総長が来日し、東京と広島を訪れました。
ウクライナ赤は2022年2月の武力紛争激化当初から、他の各国赤十字・赤新月社、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)、赤十字国際委員会(ICRC)とともに、ウクライナ全国において人道支援活動を続けてきました。この人道支援活動の中心は、ウクライナ赤の1万人以上のスタッフおよびボランティアが担ってきましたが、彼らを日々指揮し、活動を統括してきたのが、マキシム事務総長とイリヤ副事務総長です。両氏は、人道危機が続く中でも国外に赴き、直接赤十字の仲間や各国政府に会う機会を作っていますが、これはウクライナの人びとの置かれている現状とウクライナ赤による人道支援活動について直接伝えることによって、赤十字等を通じてウクライナ赤に寄せられた救援金が紛争に苦しむ人びとを支える活動にいかに生かされているかということを伝え、ウクライナで続く人道危機とそこにおける人道支援活動に関心を持ち続けてもらうためです。
またウクライナ赤は、ウクライナ国内のさまざまなニーズにより対応できるように、自らの組織を強化することも大きな柱として掲げていますが、活動を拡大する際に各国赤十字・赤新月社の事業も参考にするべく、今回の来日においては、日本赤十字社(以下、日赤)の本社の他、東京都支部、赤十字看護大学、広島赤十字・原爆病院も訪問しました。
日赤職員との協議©JRCS
ウクライナ赤幹部職員による活動報告会©JRCS
日赤が行うウクライナ人道危機救援事業では、これまで実施したウクライナおよび周辺国における人道支援ニーズへの対応の他、現在、日赤とウクライナ赤との間で二国間支援事業を実施しており、ウクライナの首都キーウに現地代表部を設置して、事業の管理を行っています。本事業実施には、日赤の多くの部署と職員が携わっていますが、今回、多くの職員がマキシム事務総長とイリヤ副事務総長と直接に意見を交わせたことは、互いに何ができるかをより深く考える機会にもなりました。
広島で学ぶ復興の歩み
世界的に政治的緊張が高まる中、核兵器が使用されるリスクは冷戦下に最も緊張の高まった時以来、これまでになく高いレベルに達しているといわれています。またウクライナ各地で戦闘が続いている中、その影響により原子力発電所の事故が生じる可能性も高まっています。今回の来日にあたって、マキシム事務総長とイリヤ副事務総長は、平和の象徴として知られる広島に訪問することを希望していました。
広島平和記念資料館や広島赤十字・原爆病院を訪れ、被爆の実相や当時の赤十字の救援活動、現在まで継続されている治療や支援について学んだマキシム事務総長からは、「広島が経験したことをウクライナで経験することがないことを願っているが、あらゆる可能性について備えていきたい」と述べ、またイリヤ副事務総長からは、「広島は破壊だけではなく復興の物語であり、この学びを糧にウクライナの復興を達成していきたい」と語りました。
原爆ドームを訪問©JRCS
赤十字は一丸となって人びとの日々を支えるための支援を続けるとともに、未だ終わりの見えない武力紛争と並行して進んでいる復興への支援も進めてまいります。引き続きウクライナ人道危機へご関心をお寄せいただくとともに、「ウクライナ人道危機救援金」へのご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
ウクライナ人道危機救援金
受付期間:2022年3月2日(水)~2025年3月31日(月)
使途: 国際赤十字・赤新月社連盟、赤十字国際委員会、および各国赤十字・赤新月社が実施する、ウクライナでの人道危機対応及びウクライナからの 避難民を受け入れる周辺国とその他の国々における救援活動を支援するために使われます。