青少年の国際交流レポート ~赤十字ネットワークからの学び~

 日本赤十字社の事業のひとつである青少年赤十字(以下、「JRC」)では、「健康・安全、奉仕、国際理解・親善」を実践目標に掲げて、日々さまざまな活動を行っています。
 そのうち「国際理解・親善」の活動を盛り上げるため、この夏に海外赤十字姉妹社が主催したサマーキャンプにJRCから参加者を派遣するとともに、各都道府県支部が主催して国際交流事業を行いました。
 今月の赤十字国際ニュースでは2週にわたって、赤十字のネットワークを通じて行われた国際交流事業から学び、活躍する青少年の様子をお伝えします。
 1週目の本号では、海外赤十字姉妹社が主催したサマーキャンプの概要と参加者の感想をお届けします。

オーストリア赤十字社主催サマーキャンプ

画像 欧州を中心に17の国から参加者が集まった ©オーストリア赤十字社

 2024年7月8日(月)~22日(月)の15日間にわたって、オーストリアのランゲンロイスでオーストリア赤十字社主催のサマーキャンプが開催されました。17か国から約40名の青少年が参加したこのキャンプに、日本からもJRCメンバーである高校生2名が参加しました。
 デジタル化が進んだ現代は多種多様な人とのつながりにあふれており、そのつながりがかつてないほど重要になっています。このような社会背景を受け、「Connective threads(つながりの糸、結びつき)」をメインテーマとして開催されたこのキャンプでは、参加者は国籍、国境を超えた交流のみならず、講義やディスカッションなどを通じてチームビルディングの手法、他者との協働とその重要性について学びました。

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【参加者の声】
 
「特に影響を受けたのがメンタルヘルスについての講義でした。この講義では精神状態とそれによって外部に表れる変化を分類し、周りの人が精神的に疲弊している時にどのようにケアし、振る舞うのかを学びました。自分のストレスの緩和についてはよく学校の授業などで扱いますが、他者へのケアの方法を学ぶのは新鮮でした。
キャンプの参加者だけでなく地元の人も参加した最終日のイベントで、日本の文化紹介を行いました。地元の人から「日本のことを新しく知れてよかった」という感想をきいて、プレゼンテーションを成功させることができたと感じました。」

(写真:聞く人が知りたいと思うことを考えながら、自分の国や普段の活動について英語で発表したJRCメンバー ©オーストリア赤十字社)

【参加者の声】

「(プログラムの一環である)マウトハイゼン収容所の見学や人道に関する講義を通じて、人種差別や暴力のない社会にするために自分ができる活動を見つけたい、国内では得られないたくさんの知識や経験を得て、今後のJRC活動につなげたい、と思って参加しました。講義中は話の途中でも積極的に発言するメンバーが多く、日本の受け身の姿勢で学ぶ講義との違いを感じました。今回参加したことで、世界を見る視野が広がり、コミュニケーション能力が上がったと感じています。もっと語学を身につけたいと思うようになったので、このモチベーションを維持していきたいです。」

モンゴル赤十字社、国際赤十字・赤新月社連盟主催 東アジアユースキャンプ

画像 東アジアユースキャンプ参加者と東アジアユースネットワーク会議メンバー(※1)が一堂に会した  ©モンゴル赤十字社

 モンゴル赤十字社は2017年から国際赤十字・赤新月社連盟(以下、「連盟」)と協働して、東アジアの青少年を対象として、人道的行動のためのリーダーシップを育成する地域プラットフォームを提供することを目的としたキャンプを開催しています。
 2024年7月24日(水)~30日(火)には、日本、中国(香港を含む)、韓国、モンゴルの青少年計41名がモンゴル・ウランバートルに集まりました。日本からもJRCメンバーである高校生9名、ユース・ボランティア1名の合計10名が参加し、東アジアの青少年と活発な意見交換を行いました。
 2024年は頻発する自然災害など、複雑な人道問題に対して前向きに対処するスキルや技術を備えた次世代のリーダー育成が急務となっていることを受け、「青少年が未来を先導する~変わりゆく世界で青少年に力を与える」というメインテーマのもと、参加者は、世界共通の課題である「気候変動」に着目した講義やゲームを通して学びを深め、自分の意見や経験を共有し合いながら「国際理解・親善」を深めました。

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【参加者の声】

「昨年度参加した、東京での青少年赤十字国際交流集会(※2)では自分の英語力の低さを痛感したため、今回のキャンプでは他者の意見に反応するだけでなく、自分の意見を伝えられるようになりたいと思い参加しました。人前で発言するのは勇気が必要でしたが、さまざまな場面で生きた英語に触れることができたと感じています。」

(写真:気候変動に対する考えだけでなく参加者間の絆も深まった ©モンゴル赤十字社)

【参加者の声】

「今後、今回のキャンプで学んだ気候変動について自分でも考え、知識を深め、周りの人に共有したいです。また、キャンプを通して成長できたさまざまな部分を今後の学校生活でも生かしていきたいです。」

※1 東アジアユースネットワーク(East Asia Youth Network)は、東アジア地域の各赤十字社のユースが主導するプラットフォームです。詳細はこちらをご覧ください。
※2 2023年11月に日本赤十字社本社(東京都港区)で青少年赤十字国際交流集会を開催しました。詳細はこちらをご覧ください。

ベトナム赤十字社主催ユース・ボランティア キャンプ

 ベトナム赤十字社は、2024年8月13日(火)~15日(木)にベトナム・カインホアでユース・ボランティアキャンプを開催し、9か国から31名(うち2名は日本のJRCメンバーの高校生)、主催地のベトナム赤十字社からは460名ものボランティアが参加しました。
 このキャンプでは「Green Volunteer(グリーン・ボランティア)~安全で思いやりのある地域社会のために~」をテーマに、ベトナムをはじめアジア地域の赤十字・赤新月社から集まった志を同じくする青少年たちとともに、お互いの意見や経験を共有し学び合いました。特に、海岸清掃やマングローブ植林プログラムを通して、社会に長期的な影響を及ぼす課題である環境問題について理解を深める機会となりました。

画像 開会式でステージに上がる参加者 ©日本赤十字社

【参加者の声】

「海岸清掃が最も印象的でした。きれいな海岸からバスでたった30分ほどのところに見たこともない量のゴミがたまった海岸があり、言葉に表せないほど衝撃的でした。日ごろ、何気なく見ていた海洋汚染の問題はこういうことだったのかと実感するとともに、普段の自分の行動を改めて見直そうと思いました。」


【参加者の声】

「さまざまな国からの参加者とキャンプの時間をともにする中で、言語の意味や他国の文化について分からないことは調べるようにしましたが、これも国際理解のひとつだと思いました。今回の経験から、たくさん勉強をし、もっと英語でコミュニケーションができるようになりたいと思っています。」

画像 海岸清掃の様子 ©日本赤十字社

 今年は、本号で紹介した海外赤十字姉妹社主催のユースキャンプのほかにも、JRCメンバーが海外でたくさんの学びと繋がりを得た夏となりました。来週は、日本赤十字社の各支部が行った国際交流事業をご紹介します。

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