青少年の国際交流レポート ~赤十字ネットワークからの学び Part2~
青少年赤十字(以下、「JRC」)では「健康・安全」・「奉仕」・「国際理解・親善」を実践目標として、子どもたちが日々、学校教育の中のさまざまな活動から学びを深めています。
この夏、実践目標の1つである「国際理解・親善」の一層の推進を図るため、日本赤十字社(以下、「日赤」)ではさまざまな国際交流事業を行いました。
前号では、海外赤十字姉妹社が主催したサマーキャンプの様子をお届けしましたが、2週目の本号では、日赤の各都道府県支部が独自に行った国際交流の様子をお届けします。
言語や文化の違いを超えた心の交流(群馬県支部)
コロナ禍により5年ぶりの開催となった「北関東三県支部青少年赤十字国際交流事業」では、2024年7月21日(日)~7月26日(金)にかけて、茨城県・栃木県・群馬県の高校生のJRCメンバー15人がマレーシアを訪れました。マレーシア赤新月社、国際赤十字・赤新月社連盟アジア・大洋州地域事務所、現地の学校などを訪問し、マレーシア赤新月社が行う事業の視察や現地のJRCメンバーとの交流などを行いました。
【参加者の声】
多文化共生社会への理解を深めること、JRC活動を含む今後の社会貢献について考えることを目的に今回の派遣を希望しました。特に印象に残ったのは、現地の学校訪問です。
現地のメンバーたちによる民族衣装でのダンスや音楽のパフォーマンスで迎えられた熱烈な歓迎はとても新鮮であり、マレーシアの文化的な豊かさと彼らのエネルギーをダイレクトに感じる機会となりました。また、現地のメンバーたちが非常にフレンドリーに接してくれたため、活発な交流を行うことができ、言語や文化の違いを超えて人と人とのつながりを実感する忘れられない経験となりました。そして、お互いの文化についてのプレゼンテーションを通じて、心の交流が深まり、新たな発見や成長を実感することができました。
今後は、学校や地域で異文化交流の重要性を伝える活動に積極的に取り組み、今回の派遣で得た経験をさまざまな形で生かしたいです。
(写真)現地のメンバーとともに ©日本赤十字社
【支部担当者からひと言】
今回の派遣を通じて担当者としても印象に残ったのは、やはり現地の学校訪問です。マレーシア赤新月社のフォローもあり、それぞれの訪問先で熱烈な歓迎をしていただきました。
プレゼンテーションの際には機器トラブルもありましたが、メンバーが急きょ場をつなぐなど臨機応変に対応しており、非常に頼もしく、彼らの成長を感じた瞬間でした。
大きなトラブルもなく安全に事業を実施できたこと、そして、コロナ禍により2019年で途絶えていたバトンを次に繋ぐことができたことに安堵(あんど)しています。
参加メンバーには、これからも自分の「健康・安全」を大切にしたうえで、今回「国際理解・親善」を目的に実施した事業で得た経験を地域へ伝えるなど、「奉仕」の気持ちを持って還元してほしいです。そして、これからも家族や友達など、近くで支えてくれる人たちへの感謝を忘れずに、優しさの輪を広げていくことがさらなる「国際理解・親善」につながっていくと考えています。
(写真)日本の歴史や文化などを発表する様子 ©日本赤十字社
日常から離れて、なりたい自分を見つける経験(千葉県支部)
2024年7月29日(月)~8月3日(土)にかけて、千葉県内の高校生・中学生のJRCメンバー各4人がネパールでの交流事業に参加しました。
メンバーたちは首都カトマンズでネパール赤十字社や血液センター、赤十字ボランティアが学んでいる大学を訪問したほか、首都からバスで5時間かけてダーディン郡に移動し、現地のJRCメンバーである小・中・高校生との交流会を行いました。
【参加者の声】
出発前は不安もありましたが、交流会での発表に向けて、ネパールの人はどんなことに興味があるんだろう、とみんなで相談しながら、千葉のお祭りの紹介、浴衣の着付けや書道体験、おみそ汁の試飲などを準備しました。発表当日はハプニングがあっても、一人ひとりがちゃんと考えを持っているメンバーだったので、協力して柔軟な対応ができました。学校や学年が違うけれど、このメンバーで訪問ができて本当に良かったです。
交流会ではネパールの人たちが笑顔で話を聞いてくれることに安心したので、自分も日本で困っている海外の人を見かけたら、笑顔で話しかけたいと思うようになりました。
また、苦手な英語とは違って、普段使っている日本語なら、伝えようと思えばきちんと人に伝えられると思うようになり、以前より積極的に話そうと考えるようになりました。
ネパールの学生が解決の難しい社会問題を自分のこととしてとらえ、自分でコミュニティを作って主体的に行動している姿に刺激を受けたので、まずは今回の経験を周囲に伝えていくことが自分の役割だと感じています。
(写真)苦労して準備した文化発表は大成功でした ©日本赤十字社
【支部担当者からひと言】
コロナ禍を経て、4年ぶりに海外赤十字姉妹社に訪問する形の国際交流を再開しました。
訪問期間中の発表は会場と大人や子どもなど対象者を変えて全部で4回ありました。毎回、使える時間や設備が変わることにもめげず、活発に意見を交わしながら、メンバーたちは自分で調整をして交流会を成功させていきました。回数を重ねるごとに、発表を聴いているネパールの人たちに質問を投げかけてみたり、資料を事前に渡すようにしたりと経験を生かして工夫を凝らすメンバーの姿に成長を感じました。
帰国したいま、出発前の事前学習会で会った時とは打って変わって、メンバーたちが学年を超えてとても和気あいあいとした雰囲気になっていることに驚いています。
青少年の派遣を許可してくださった学校からは「赤十字の行事だから安心して生徒を任せられる」との声も寄せられています。今回得られた知見を生かして、より青少年にとって学びの多い事業となるよう、交流事業を続けていきたいと思っています。
(写真)メンバーからは「1つの場所で過ごしているとわからないさまざまな文化があることを学んだ」と感想が寄せられました ©日本赤十字社
相手を知る楽しさに気づいた旅(愛知県支部)
愛知県支部では岐阜県支部とともに、2007年よりモンゴル赤十字社と国際交流事業を行っています。今回は2024年7月30日(火)~8月4日(日)に国際交流事業を開催し、愛知県・岐阜県の中学生や高校生など17人がモンゴル赤十字社本部やバヤンズルフ支部、ユース発展センターなどを訪問し、文化紹介や交流キャンプを行いました。
【参加者の声】
日本にいるだけでは気付かない異なる視点を持つことができると思い、派遣を希望しました。今回の派遣でたくさんの興味深い経験をし、モンゴルの文化と伝統を学びました。例えば、多種多様なチーズやヨーグルトなどの乳製品を味わったり、デールという伝統衣装を見たりしました。中でも印象に残っていることはゲルに泊まったことです。ゲルにはモンゴルの厳しい冬を乗り越えるための工夫がされていて、まきストーブがあり、すべて南を向いて建っていました。また、ゲル内では日本同様に敷居を踏んではいけません。モンゴルの伝統を知ると、日本との違いやモンゴル独自の考え方を知ることができて興味深かったです。相手のことを知る楽しさと重要性に気付いたとともに、そのような気づきは国際交流において重要な要素だと思いました。
【支部担当者からひと言】
モンゴル赤十字社ユースメンバーは、不安まじりのJRCメンバーを笑顔で出迎え、彼らの言葉に耳を傾け、表情を丁寧に読み取ってくれました。そうしたもてなしを受け、JRCで大切にしている態度目標の「気づき・考え・実行する」リーダーシップを発揮することができ、両国赤十字社のメンバー同士で心が通じ合う経験ができたと考えます。JRCメンバーには、モンゴルでの経験を自分の所属先や地域で広め、これからも積極的にJRC活動を続けることを期待します。
前号と本号、2週にわたり青少年の国際交流の様子をお届けました。
同じ赤十字の一員でありながら異なる文化的背景を持つ同世代との国際交流事業は、日ごろの活動では得られない視点や気づきを青少年に与え、彼らの世界を広げてくれます。これは日本のみならず両国の青少年にとって、貴重な経験となり、これからの活動における糧となります。
赤十字が持つ世界的なネットワークをきっかけにできたつながりを大切にしながら、一人ひとりが今回の学びを生かして、それぞれの地域で力強く活動していきます。
来年は日本を会場に国際交流事業を開催する予定です。
未来を担う子どもたちが、いのちと健康を大切に、地域社会や世界のために自発的に行動し、世界の人びととの友好親善の精神を育んでいけるよう、日本赤十字社はこれからも青少年赤十字事業を推進していきます。