【速報】レバノン人道危機:レバノンでの赤十字による支援を拡大。日赤は10月15日より海外救援金の受付を開始

 イスラエルとガザの武力衝突激化から1年が経過し、人道危機の影響は周辺国にも波及しています。レバノンでは武装組織とイスラエルの衝突により国内情勢が刻々と悪化しており、その影響はイスラエルと国境を接する南部に留まらず首都ベイルートにまで及んでいます。現在の情勢は2006年以降最大のエスカレーションとも言われ、レバノン保健省によれば昨年10月以降これまでに2,000人以上の死者、1万人以上の負傷者が報告されています(10月9日時点)。また、120万人を超える人びとが安全な場所を求めてレバノン国内やシリアなど周辺国等への避難を余儀なくされています。近年深刻な経済危機に見舞われているレバノンでは、食料や医薬品価格のさらなる高騰等、より一層の混乱が懸念されます。

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アッカーに暮らすレバノン人のアル・ダリさん一家。家は破壊されてしまった(731日撮影)©ICRC/Mohammad Yassine

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レバノン南部国境付近(731日撮影)©ICRC/Mohammad Yassine

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ベイルートに避難し路上で夜を明かす人びと(928日撮影)©ICRC/Mohammad Yassine

緊急医療、避難者支援、救援物資の提供を強化

 赤十字は、日々の情勢悪化に伴う100万人を超える避難者等への対応のため、南部地域、ベッカー高原、レバノン山岳地域、ベイルート南部郊外等各地で支援活動を展開しています。

レバノン赤十字社

 通信機器の連続爆発が起きた9月17日当初から、救急隊を出動させ、負傷者の捜索・救助活動、救急車での搬送等を行い、12万人以上に緊急医療サービスを提供しました。また多数にのぼる避難者のための救援物資の配付も行っています。9月29日までの支援内容は以下の通りです。

・救急車の出動:352

・救急隊の動員:1,215人以上

・避難者向け食料の配付:21,675セット

・衛生用品の配付:7,062セット

・マットレス配付:12,367

・毛布の配付:17,097

・その他救援物資:99,234セット

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負傷者を搬送するレバノン赤十字社の救急隊©LRC

パレスチナ赤新月社レバノン支部

 パレスチナ赤新月社レバノン支部は、レバノンに暮らすパレスチナ難民の人びとの医療を支える活動をしています。レバノン支部自体も空爆の影響で建物が被害を受けるなど困難な状況下ではありますが、9月17日には爆発の被害にあった方々への対応として、救急車と救急隊が出動。88人の負傷者がパレスチナ赤新月社の病院に搬送されました。医療物資の不足が深刻なため、さらなる支援が必要です。

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救助にあたるパレスチナ赤新月社レバノン支部の救急隊©PRCS

シリア赤新月社

 レバノンから国境を越えてシリアへ避難する人びとも日に日に増えており、その数は10月7日現在24万人を超えました(UNHCR)。104日には検問所周辺が攻撃され、生命線とも言える道路が寸断されました。このような状況下でシリア赤新月社は避難してきた人びとに対して昼夜問わず支援を継続しています。(国境付近の動画はこちら

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シリアに逃れてきた人びとの支援にあたるシリア赤新月社のスタッフ©SARC

国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)

 レバノンでの支援強化のため、中東危機に関する既存の地域アピールから資金が再配分され、さらに災害救援緊急基金(DREF)からも緊急対応資金が拠出されました。IFRCは、これまでに救急車6台、移動式医療ユニット1台、外傷キット8トン、トラウマキット33個、マットレス1万枚、毛布2万枚、食料1万セットを提供しました。

赤十字国際委員会(ICRC)

 影響を受けた地域の病院の支援のために空輸した17トンの医療物資が、10月4日にレバノンに到着しました(動画はこちら)。これらの物資は、ラフィク・ハリリ大学病院やザーレ公立病院の外傷ユニット等において、戦傷や外傷の治療に使われます。ICRCはレバノンの保健省やレバノン赤十字社と協力し、負傷者への救命医療の提供を強化しています。

赤十字による共同声明

 10月3日にレバノン赤十字社の救急隊員6人が負傷する事態が発生しました。このような状況を受けて、レバノン赤十字社、ICRCIFRC10月6日に共同声明を出し、国際人道法に則り、民間人、負傷者、医療従事者、および救急車を含む医療施設は保護されなければならないことを改めて強調しました。赤十字はレバノン各地で人びとの命と尊厳を守るための緊急かつ必要な人道サービスを提供しており、その活動を継続する必要があるからです。

日本赤十字社は10月15日から海外救援金の受付を開始

 日本赤十字社は、この度のレバノンで深刻化する人道状況を受け、1015日(火)より「レバノン人道危機救援金」の受付を開始いたします。お寄せいただいた救援金は、赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、レバノン赤十字社、日本赤十字社等が実施するレバノン国内及びレバノンからの避難民を受け入れるシリアなど周辺国とその他の国々における赤十字の救援・復興支援活動等に使用されます。

私たち赤十字の根幹である、苦しんでいる人びとの命と尊厳を守る支援活動が続けられるよう、皆さまのご関心とご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

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