アフガニスタンを忘れない~現地で続く赤十字の地道な取り組み~

2021年のアフガニスタンでの政変から3年が経過しました。ウクライナやイスラエル・ガザ等の人道危機、世界各地で発生している気候変動に伴う大災害が人々の関心を集める一方で、アフガニスタンでは多くの人々が40年以上もさまざまな困難の中での生活を余儀なくされています。
今号では、複雑で複合的な人道危機に直面しているアフガニスタンのこれまでと、日本赤十字社(以下、日赤)が支援する現地での活動の様子をお届けします。

孤立化する中での人道危機の深刻化

アフガニスタンでは2024年現在、喫緊の人道支援を必要としている人々が国民のおよそ3分の2にあたる2,800万人に上ります。長年にわたる紛争に加えて、干ばつ、洪水、食糧危機、人口移動、限られた保健システム、不安定な経済が相互に絡み合い、特に女性や子ども、貧困者層等のいのちと健康が脅かされています。
同国では、女性に対し、教育、公共の場での発言、女性のみでの公共交通機関の利用を禁止する等、女性の権利が制限され、コミュニティにおける貧困率を加速しました。その結果、児童労働、児童婚、移住等を余儀なくされる人が増加し、人々の状況は悪化の一途をたどっています。
政変をきっかけにアフガニスタンは経済制裁を受け、外部からの支援や外貨獲得の減少につながっています。これはもとより、弱い立場に置かれた人々のぜい弱性を悪化させています。さらに現在は、国際社会からの関心も薄れています。

女性の自立と生活を助けるために

日赤は2020年7月から、アフガニスタン赤新月社(以下、アフガン赤)および連盟と協力し、干ばつや洪水等、気候変動の影響によって生活を脅かされている人々を支援する5か年の事業をヘラート州およびサマンガン州において実施しています。アフガン赤は、4,284人の職員と27,000人のボランティアを擁し、政変の後も同国の全土で幅広い人道支援活動を実施しています。本事業は「生計支援」と「防災活動」を二本柱に、事業4年目(2023年7月~2024年6月)は、300世帯1,398人を対象にした生計支援に重点的に取り組みました。
生計支援の主な目的はアフガニスタン人女性の自立した生活を実現することです。その具体的な取り組みとして職業訓練と植樹を実施しました。支援を受けた女性たちは、自らの力で前に進み、収入を得ることができるようになります。

職業訓練:新たな一歩を踏み出す支援

紛争や災害により資産や職を失い避難を余儀なくされた人々が自分の手で再び収入を得られるようになるための支援を行いました。家畜の飼育、オートバイ修理、携帯電話修理等の技術研修を実施しました。人々は活動計画を策定しそれにのっとり取り組みを開始します。各世帯には道具の調達などのため、26,000アフガニ(約54,400円)の資金を給付します。受益者の7割が女性です。
夫を亡くしたカリマさん(50歳)は、4人の子どもの世話をしながら、家族を養うためにこれまで他人の家で洗濯や掃除など複数の仕事を休みなくこなしてきました。しかし、アフガン赤の活動に登録したことで、必要としていた経済的支援を受けることができました。彼女は将来にわたって着実に収入を得られる養蜂に挑戦し、現在、自分の蜂の巣から採れた蜂蜜を市場などで販売して生計を立てています。

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養蜂をするカリマさん © IFRC

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カリマさんが採取した蜂蜜 © IFRC

アフガン赤は、資金提供に加えて、特定の技術や経験を有していない人々を対象に技術取得のための職業技能訓練を実施しています。2024年にはおよそ100人の女性たちが6か月間にわたる訓練に参加し、10月に修了しました。この訓練は洋服の仕立てに重点を置いており、11月からは実際に収入を得るための活動を開始します。

コミュニティで裁縫を教えているサレハさんもまた、子どもたちの生活費を自身で賄えるようになっただけでなく、夫と生活費を分担することができるようになりました。サレハさんのインタビュー動画はコチラから。

植樹:乾いた大地を豊かな農地に

乾いた大地への「植樹」も大切な活動です。夫を亡くした女性が世帯主として農業を営むことも多々あり、植樹を通じて、地域の緑化を進めるとともに、成長した木々になる実を市場に販売することで、人々の生計支援につなげます。これまでアーモンドやピスタチオ、りんご等22.2万本の植樹を行いましたが、干ばつにより苗木が思うように育ちませんでした。そのため2023年からは、かんがい用の太陽光発電ポンプの設置を活動計画に追加し、事業を実施してきたところです。そして2024年6月上旬、事業地のヘラート州(8台)およびサマンガン州(2台)で合計10台の設置が完了し、アフガン赤から現地のコミュニティに引き渡されました。これにより、アフガニスタンの乾いた大地が潤い、配付した苗木を育てることができるようになりました。また、この水は安全なため女性や子どもを含むコミュニティの人々が飲み水として使用することもできます。さらにこのシステムはポンプ式のため、人々が水を運ぶ重労働から解放されました。

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(左右)太陽光発電ポンプのコミュニティへの引き渡し式 © IFRC

現地で活動する連盟職員からのメッセージ

連盟事務所で働くアフガニスタン人のホマさんは、アフガニスタンについて次のように語りました。

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連盟事務所で働くアフガニスタン人のホマさん

アフガニスタンは繰り返される緊急事態の悪循環から脱却しなければいけません。アフガニスタンの人々は、緊急事態から回復する力がなく、対処能力が枯渇している状況です。長期的な戦略を立て、持続可能な方法で人道危機の根本的な原因に取り組むことで、度重なる危機への対応が可能になります。

そしてアフガニスタンにおいて女子教育の禁止から女性の就労制限がされている一方で、アフガン赤は女性と子どもを対象としたプログラムに重点を置き継続しています。制約は増えていますが、日本の皆さまからのご支援をいただき、この活動を続けることで、現地の女性たちが自立し、一家の大黒柱となる機会が創出されています。

アフガニスタン国内で支援を必要としている2,800万人の人々のことを忘れないでください。私たちが一つになり協働することで、アフガニスタンの貧困の負の連鎖に終止符を打つことにつながります。

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