13/02/19
東京電力福島第一原発の事故により、閉鎖を余儀なくされていた楢葉町立あおぞらこども園。楢葉町民の8割以上が避難しているいわき市で再開するにあたり、日本赤十字社は仮設園舎や遊具の整備などを支援しました。1月5日から約2年ぶりの登園が始まり、こどもたちは元気いっぱいに園生活を送っています。
同学年の子と遊べる貴重な場
「家で育てていた間に甘えん坊になった節があったので、安心しました」
伊藤尚人(たかひと)君(5歳)が泣くこともなく仮設住宅から40分強のバス通学ができていることに、母親の伊藤順子さんは胸をなでおろします。震災以降、避難先では予定に見通しがつかなかったために自宅で過ごすことが多かった尚人くん。集団生活を送っていなかったためか言葉づかいが乱暴になり、友達と仲良くできるかの懸念もありましたが、「毎日楽しそうに通い、“友達とカルタやトランプで遊んだ”などと報告してくれています」。
こども園の再開で一番ありがたいのは、同学年の子と遊べることだと順子さんは言います。「環境が変わってしまって、近所にはいませんから。園児数が多ければもっと楽しいと思うのだけど・・・」と園児数が激減したことについては残念がっていました。
■“一緒に帰ろう”の象徴
現在、あおぞらこども園に通うこどもは22人で、震災前の約1割程度。平成23年12月時点のアンケートでは40人を超える入園希望があり、60人規模の仮設園舎が計画されましたが、財政難や敷地探しなどの手続きに時間を要したため、開園した時の入園児は半分になっていました。
それでも、今年1月に実施したアンケートでは30人ほどの入園希望があるなど、必要とする声は小さくありません。原発事故からしばらくの間、放射線への不安で子どもが外で遊ぶ機会が減り、全体的に体重が増加したとの指摘もあります。阿部和宏園長は「こども園は盛土をしているので放射線量は低く、遊具も支援により刷新しているので、屋外で体を動かす機会も増えるでしょう」と強調。そのうえで、「こども園と同じ敷地には楢葉小学校と中学校があり、いわば仮の楢葉町になっています。仮設住宅や借り上げ住宅などでバラバラになってしまった町民が“ここで結束を強めてみんなで一緒に帰る”という思いを形にした拠点としても、この施設の意義・役割は大きいです」と、園の再開に意気込みを語りました。