12/08/22
学校から遠く離れた仮設住宅に暮らす小中学生の通学を助けようと、日本赤十字社は子どもたちが夏休みの間を利用して、福島県の葛尾村(かつらおむら)、大熊町(おおくままち)、大倉保育園「社会福祉法人誠友会」(いわき市)、岩手県大槌町にスクールバス計10台を寄贈しました。(写真:葛尾村(三春町)での贈呈式の様子)
海外救援金を財源とする教育支援事業「KIDS CROSS Project」(日赤キッズプロジェクト)の一環です。
今回初めてスクールバスが贈られた葛尾村と大熊町は、全域が原発事故による避難対象地域となっており、行政の拠点をそれぞれ三春町、会津若松市に移転しています。子どもたちが入居する仮設住宅もバラバラですが、スクールバスは複数の運行ルートを編成し、通学をきめ細かくサポートしていきます。
寄贈式当日、葛尾村の松本村長は「バスが届くのを楽しみにしていました。不便な避難生活が続きますが、生活バスとしても有効に使います」と話しました。
葛尾村では夏休みが明けるのを前に、早速スクールバスを利用して、子どもたち44人が町から約30㎞離れた屋内プールへミニ遠足に出かけました。屋外での活動はまだ気になりますが、遊び始めると子どもたちは元気いっぱいプールでおおはしゃぎ。引率した大和田校長先生からは「大変ありがたいです。子どもたちにとって、夏休みの最高の思い出になります。これからも子どもたちのために大切に使います」とコメントを寄せていただきました。(写真:プール遠足へ出かけた子どもたち)
大槌町にはマイクロバス5台が贈られました。岩手県内では山田町に続いて2例目です。
大槌町は、東日本大震災の大津波で甚大な被害を受けました。被災によって使用できなくなった4つの小学校(大槌、大槌北、赤浜、安渡(あんど))と大槌中学校は、昨年9月に同町内の「大槌ふれあい運動公園」に建設された仮設校舎で勉強を続けています。同学校は、仮設住宅等から遠く離れているため、日本赤十字社では今年4月からレンタカーによる運行支援を行っていましたが、このたび車両5台を寄贈することとなりました。
全11ルートのうち、5ルートの登下校用に充てられ、このバスによって138名の児童が通学する予定です。この支援により、子どもたちは安心して通学、体験活動や部活動を続けることができます。
車両には、日赤の取り組みの一環として、AED(自動体外式除細動器)を搭載しており、今回、日赤が建設を支援した仮設体育館を利用して、ドライバーさんや先生方に使用方法を学んでいただく機会を設けました。(写真:AED講習会の様子)
■「子どもたちが明るく前向きに」ラッピングに込められた願い
スクールバスを際立たせるカラフルなハートいっぱいのラッピングは、日赤キッズクロスプロジェクトの教育支援事業を象徴するデザインマークです。デザイナーの梶谷芳郎さんに昨年7月に制作してもらいました。(写真:H24.7.26バス検収に立ち会った東日本大震災復興支援推進本部のスタッフと記念写真。車体中央「キッズクロスロゴ」右隣が梶谷さん)
梶谷さんは「日赤は真面目で硬派な印象が強いです。せっかく良い事をしているのだから、もっと世間の注目や関心が向くよう、お手伝いしたいですね。キッズクロスプロジェクトのマークは、子どもたちの気を引くようカラフルで活発な、親しみをもってもらえるようなデザインにしました。多くの子どもたちに明るく前向きな気持ちになってもらえたらうれしいです」と話しています。
梶谷さんと日赤との関わりは、赤十字シンボルマークを一新し、デザインマニュアルを全面改訂した平成20年から。以来、各種赤十字関連のデザイン制作に関わっていただき、復興支援事業でも、生活家電セットメッセージ、サマーキャンプのデザインを手掛けていただいています。
世界と被災地とをつなぐ復興支援事業は、いろんな方の力を借りながら今後もまだまだ続いていきます。