「差別ゼロの日」に寄せて ~アジア地域赤十字・赤新月HIV/エイズ対策ネットワーク会議に参加して~

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3月1日―今日が何の日か、皆さんはご存知ですか?

3月1日は、「差別ゼロの日」です。2013年12月1日、オーストラリアのメルボルンで開かれた世界エイズデー式典で、国連合同エイズ計画(UNAIDS)により、「差別ゼロの日」を定めることが発表されました。残念ながら、HIV/エイズに対する正しい知識・理解がないことから、いまだに偏見や差別が根強く残る国や地域も数多くあります。偏見や差別を恐れて検査を拒み、その結果として保健サービスや治療を受けられない事例、そして感染がさらに拡大する実態も報告されています。「偏見や差別のない世界を目指すかどうかは、選択の問題ではありません。義務なのです」と、UNAIDSミシェル・シディベ事務局長は訴えます。

 赤十字は長年にわたり、世界各国でHIV/エイズの予防、治療、患者へのサポートを行うとともに、偏見や差別と闘うための意識啓発活動を続けています。今回の赤十字国際ニュースでは、エイズ拠点病院の一つである京都第一赤十字病院の感染制御部長である大野聖子医師が、アジア地域各国の現状について報告します。

多くの国で新規発生が減少する一方、改善が見られない日本

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会議参加者である赤十字の仲間と。右が大野医師。

2017年11月、私はマレーシア・クアラルンプールで開催された、アジア地域赤十字・赤新月HIV/エイズ対策ネットワークの会議に参加しました。このネットワークは、HIVの感染拡大を地域全体の課題として捉え、各国の赤十字社がもつ経験や情報を共有して効果的な活動を実施するために、1994年に東アジアおよび東南アジアの赤十字社・赤新月社により結成されたネットワークです。今回の会議には日本を含む12カ国が参加し、それぞれの現状や赤十字の活動について報告がありました。


 東南アジアでは1990年代後半にHIVの流行のピークがあり、以後国をあげて対策に取り組んできました。UNAIDS の2017年の報告書によると、カンボジアでは2000年には8831人の新規発生がありましたが、2005年には半分の3900人に、2016年には15分の1の586人にまで減少しました。他の東南アジアの国々でも同様で、タイでも発生率は2005年から2016年にかけて3分の1に、他の国々も少なくとも10年間で2分の1に減少しています。これらの国々では、1990年代後半から自国の赤十字社が予防、ケア、治療推進などで大きな役割を担ってきました。一方、日本は2010年以降不変で、数少ない改善していない国の一つであることは、特筆すべき点です。そのほか、アジア地域では、国々をまたぐ移住労働者への予防と治療の必要性が高まっていますが、これに対しては、世界中にネットワークをもつ強みを活かし、各国赤十字社が連携してすでに様々な取り組みを始めています。

 一人ひとりが自分らしく生きていくことを認め合う社会を

今回の会議では、MSM(男性同性愛者)への対応もアジア諸国共通の課題であることが改めて確認されました。この問題に対応するためには、性の多様性への理解が不可欠ですが、まだ一部のアジア諸国では、宗教や国の方針で公にされていない面があるようです。

日本においても、「性」は公に語られにくい話題の一つですが、エイズの予防は性の話題とは切っても切り離せない関係にあります。そこで日赤では、若者同士が話しやすい雰囲気の中で性に関する正しい知識や行動について話し合う機会を作るために、青年赤十字奉仕団のメンバーを中心にピア・エデュケーションを行っています。参加者は、HIV/エイズに関する知識と予防方法を学び、命について、ともに生きる意味について話し合います。こうした予防運動や差別・偏見をなくすための取り組みは、世界各国の赤十字においても、青少年メンバーや若いボランティアが重要な担い手となっています。
HIV/エイズをきっかけに性の多様性への理解に気がつけば、それは、国籍、民族、宗教の違いに対する理解へと広がります。つまりは、一人一人が自分らしく誇りを持って生きて行くことを認め合える、寛容な社会を目指すことにつながって行きます。これは、赤十字の精神そのものと言えるのです。


PDF版はこちら:赤十字国際ニュース7号_エイズ差別ゼロの日に寄せて.pdf