南部アフリカ:世界のHIV感染者数≒カナダの全人口

~今春、現地を訪れた鄭恵梨看護師(大阪赤十字病院)が報告します~

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現地を視察する赤十字チーム。右から国際赤十字・赤新月社連盟ヘイディ・イソハンニ保健担当、日本赤十字社鄭恵梨看護師、菅原直子看護師長、他3名はマラウイ赤十字社の職員とボランティア。(マラウイ)

世界のHIV感染者の総数は約3,670万人。これはカナダの人口※ に匹敵します。そして、世界の15~49歳のHIV有病率ランキングの上位9位はすべて南部アフリカ地域の国々です。

日本赤十字社は、2003年から南部アフリカにおけるHIV感染症対策に焦点を置き、近年は同地域のうち5カ国(ナミビア、マラウイ、スワジランド、南アフリカ、ザンビア)を、国際赤十字・赤新月社連盟を通じて支援しています。今回は、そのうち訪問した2カ国(南アフリカ、マラウイ)の状況をご紹介します。

HIV感染症対策でヤギ!?


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タバコの葉の栽培(マラウイ)

世界の中でも最も貧しい国のひとつ、マラウイ。
タバコやトウモロコシなどを栽培する農業が主要産業の国ですが、ここ数年の干ばつで、人々の生活はさらに逼迫しています。


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ヤギの小屋。小屋の2階に家畜が住み、糞が1階に落ちて肥やしを作る仕組み。糞が1階に落ちるため、2階は衛生的である。(マラウイ)

マラウイ赤十字社は、HIVが原因で働き手を失い、貧困となった世帯を対象にヤギを提供する「Goat pass on(ヤギの受け渡し事業)」を行っています。ヤギを受け取った人は、ヤギを交配させて増やします。赤ちゃんヤギが生まれると、お母さんヤギを次のメンバーに渡します。このように、ヤギの数を増やし、地域でヤギの所有者を増やします。ヤギの肉を販売できるようになるほか、その糞も肥やしとして利用できます。そのため、畑での余剰作物が増え、肥やしや余剰作物を売ることで、現金収入を得ることができ、生計の安定に繋げることができます。

移動式HIV検査


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移動式HIV検査。プライバシーを守るため、テントの中で検査をします。検査結果も、この中で知らされます。(南アフリカ)

新規HIV感染者数が世界で最も多い国は、南アフリカ。
南アフリカ赤十字社は月曜から金曜まで、毎日場所を変えながら、人々が集まる場所に赤いテントを立て、移動式HIV検査を実施しています。南アフリカでは、近所のクリニックで誰でもHIV検査が受けられます。しかし、周りの目を気にする若者は、クリニックよりも少し家から離れたところで実施される移動式HIV検査を好む傾向があります。プライバシーを保つために、実際の検査はテントの中で行われます。
検査結果が出るまでおよそ10分。その間も、貴重なカウンセリングの時間です。HIVに関する正しい知識や安全な性交渉について、カウンセラーから指導を受けられます。

HIV陽性とわかったら・・・

「陽性」の結果が出た場合、多くの人が呆然として言葉を失います。少し時間が経ってから「実は心あたりがあったんだ…」と告白する人もいれば、「もう一度、検査をしてほしい」という人もいます。

「何も症状がでないので、HIV陽性だと分かっても、しばらくは病院に行かない人が多いです。近所の人から差別されるのではないかという恐怖心もあって、HIVに対する偏見が治療の遅れや中断に大きく関係しています。だから、結果の告知後も、必ず陽性者に対してフォローアップを行っています」と、カウンセラーは話します。

HIV問題の解決のために


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南アフリカ赤十字社のエイズ孤児も所属するキッズクラブ(学童保育)の子どもたちとふれあう鄭恵梨看護師(南アフリカ)

HIVの感染予防のためには、保健や医療的な介入が不可欠ですが、それだけでは不十分です。貧困が原因で、売春をせざるを得ずHIVに感染してしまう少女たち。教育を受けられないために、字が読めず知識もなく感染予防の方法を知らずに感染してしまう人々。HIV問題を解決するためには、人々の生計を安定させる生計支援やHIV拡大を防ぐための教育など包括的な支援が必要です。

今後も日本赤十字社は、HIV問題を解決するために、生計支援や就学支援を含めた包括的な支援を継続します。

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