■フィリピン:ボランティア活動の原動力


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胸部圧迫の指導をする加藤看護師(左)

2013年11月、フィリピンに甚大な被害をもたらした台風「ハイエン」。日本赤十字社は台風の被災地で緊急・復興支援を行ってきました。被災地のひとつであるセブ北部地域においては、昨年1月から地域住民の健康で病気にならない力をつけるための保健衛生事業を実施しています。今年2月から派遣されている加藤加奈子看護師(武蔵野赤十字病院)が、先日実施された救急法講習の様子をお伝えします。


5年前の台風を忘れない

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焼けつくような暑さの中、救急法講習がポブラシオン町で行われ、この町のボランティア20名以上が参加しました。
「なんでこの講習に参加したかって?5年前のあの台風を忘れていないからだよ。だから僕はここに来ているんだ」休憩時間にもかかわらず屋外で包帯の巻き方を練習する52歳のラウルさんは、汗を拭いながら力強くこう言いました。




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包帯の練習をするボランティアのラウルさん(左から2人目)

活動の中心となるのは、200名近くに及ぶ地域保健ボランティア(以下、ボランティア)たち。15の村から、住民がボランティアとして自分たちの村を支えられるようになるため活動に参加しています。現地の人々にとって、一番身近な保健医療施設は村の診療所です。しかし、医師や看護師が常駐していなかったり、十分な器材がそろっていないところもあります。そういった中、家族や近隣の人に助けが必要になった時、誰が彼らを守るのでしょうか?それは、そこに住む住民自身です。「自分たちで自分や身近な人を守る」術を身につける必要があるのです。



身近な人を救えるって素晴らしい

今回実施した講習は胸部圧迫による心肺蘇生法(心臓マッサージ)の実技です。胸部圧迫は、膝をついた体勢で、両腕に上手く体重を乗せながら患者の胸部圧迫を絶え間なく続ける必要があり、若い成人男性でもかなりの体力を消耗します。参加者の一人である62歳のクレセンシアさんは、持病のため膝を曲げると痛みが出ます。胸部圧迫の動作は辛いのではないかと心配になり、彼女に声をかけました。すると彼女は笑顔で「私はもう若くないから、正しく圧迫できないだろうし、誰かを助けることはできないかもしれない。でも、今日学んだ知識を誰かに教えることは私にだってできるわ。それで身近な誰かを救えるって素晴らしいことだと思うの。だから私もやってみたいの。」

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痛みをこらえながら胸部圧迫の実技を行うクレセンシアさん(右)

実際にやってみると、やはり膝の痛みのため胸部をうまく圧迫することはできません。しかし、講習が終わって帰途につこうとするクレセンシアさんをねぎらうと、「とてもためになる講習だったわ。帰ったら復習しなきゃ」と、晴れ晴れとした表情で握手の手を差し出しながら言いました。メモをぎっしり書き込んだ教本を片手に、クレセンシアさんは自信と達成感にあふれた様子で帰っていきました。






地域を守る底力

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手作りの血のりで臨場感のある講習現場

20名あまりのボランティアたちは、みな熱心に講習に取り組み、無事に2日間の課程を修了しました。ボランティア活動はすべて無報酬ですが、仕事や家庭の事情をなんとか調整しながら活動に参加しています。「台風の体験を忘れない」という思いを胸に秘めたラウルさん。「若い人たちに救急法を伝えることで手助けをしたい」という思いを持ったクレセンシアさん。さまざまな熱い思いが原動力となっています。「みなさんの協力があるからこそ、活動が実施できています。わたしたちの活動は、必ず地域の人々のために役立つと信じて一緒に頑張りましょう」。ボランティアと会う時、私は感謝の気持ちを一人ひとりに伝えるように心がけています。

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熱い思いを胸に講習を受けたボランティアたち

現地で住民たちに救急法の知識や技術を伝えていると、ボランティアの「思い」が「地域を守る底力」に変わっていくのを実感します。今後も活動に参加するボランティアの思いに寄り添い、日赤の支援が終了した後も、彼らが私たちと一緒に得た知識と技術で「自分たちで自分や身近な人を守ること」ができることを目指し、活動を続けます。

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