伊勢赤十字病院~最先端の心臓手術を実施(TAVI実施施設に認定)

最近息切れが強くなった、動悸(どうき)がする、動くとしんどい、めまいや立ちくらみがするといった症状が気になる方は一度、お近くの医療機関をぜひ、ご受診ください。

「年を取ったからかな」と思っていたこれら症状が実は、突然死にもつながる恐ろしい病気(大動脈弁狭窄(きょうさく)症)のによることがあります。

大動脈弁狭窄(きょうさく)症とは

大動脈弁とは、心臓から血液が出る大動脈との間にある弁で、血液を効率よく循環させるための精密装置です。しかし、年を取るにつれてこの弁が石灰化して固く開かなくなり(大動脈弁狭窄症)、動悸や息切れ、胸部の不快感といった症状を引き起こすだけでなく、失神や不整脈によって突然、命を奪われることがあります。日本では近年、高齢化に伴って増加している病気です。

治療は、狭窄の程度が軽い場合は薬物療法から始めますが、残念ながら、固くなった弁がまたしなやかに開閉するようになる薬物はありません。このため、狭窄が重い場合は、悪くなった自らの弁を人工弁に置き換えることが必要です。

手術は人工の心臓と肺を取り付け、心臓を止めて切開して直接、人工弁に取りかえることが一般的です(人工弁置換術)。麻酔や人工心肺、手術・周術期の管理技術の進歩から近年、外科的な人工弁置換術は非常に安全・確実に行われるようになってきました。現在の大動脈弁狭窄症に対する基本的な治療方針は、どこにおいても外科的な人工弁置換術が第一の選択です。

しかし、高齢化に伴い、中には手術を受けることが危険なため、根治的な治療を断念せざるを得ない場合がありました。このような方のその後の余命や生活レベルの低下は、否めませんでした

経カテーテル大動脈弁治療(TAVI)とは

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TAVI施術風景

このような方に対して、人工心臓や肺を用いず、また、心臓を止めることもなく人工弁に交換する方法が2002年、フランスで初めて成功しました。

この手術手技を「経カテーテル大動脈弁治療(TAVI)」と言います。

通常は全身麻酔のうえ、大腿部の動脈からカテーテル(管)を大動脈弁まで導き、そこでまずバルーン(風船)を膨らませることで固くなった大動脈弁を押し広げます。

その後、大動脈弁に圧着させることで人工弁を取り付ける方法です。

TAVIは患者さまの体に対する負担は極めて低くなります。順調に進めば手術終了後に麻酔から目覚めさせ、人工呼吸器を外すこともできます。

集中治療室で1日を過ごした後は、一般病棟へ移ることもできます。その後はリハビリを受けていただき、平均的に10日前後で退院できるとされています。

TAVIはこのように、これまで手術を受けることができなかった大動脈弁狭窄のある方に対して、大きな恩恵をもたらしてくれました。

しかし重要なポイントとして、現在使用できる器具の制限から、TAVIがリスクも低い治療とはいえないことが挙げられます。手術に伴った重い合併症や大動脈弁周囲に逆流が残る可能性といった問題が、いくつか残されています。TAVIは有益な方法ですが、ひとたびトラブルが発生すると命にかかわる危険性をはらんでいることは理解する必要があります。

このため現時点でのTAVI適応者はあくまで、リスクが高すぎて手術ができない方が対象です。また、10年程度のフォロー期間しかないことから、若い方や透析を必要とする方への適応はありません。

TAVIの技術や機材は現在、ますます改良され、より安全・確実に手技が行えるようになってきています。日本でも2013年10月からようやく、一般病院での実施が認められるようになりました。

ただし、この治療法には特別な施設や機材、技術を持つ医療従事者が不可欠なことから、厳正な審査の下で施行が認定されています。

伊勢赤十字病院がTAVI実施施設に認定

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2月2日に記者発表を開催。院長・担当医らが手術の説明や報告を行いました

伊勢赤十字病院(三重県伊勢市)は2015(平成27)年10月、関連する学会協議会から赤十字病院の中で名古屋第一赤十字病院(愛知県名古屋市)と徳島赤十字病院(徳島県小松市)に続いて、3番目の施設認定を受けました。

1月29日には83歳女性、2月12日には81歳女性がTAVIを受療。周術期経過は安定し、約1週間で退院していただくことができ、良好な結果が得られています。

伊勢赤十字病院は心臓血管外科や循環器内科、麻酔科、放射線科、リハビリ科、精神科や地域連携科といった広域のチームからなるメンバーで「ハートチーム」を形成し、症例を誠実に検討。今後も適応する症例に積極的に取り組んでいきます。