アフリカ食料危機:飢餓ゼロに向けた支援の3つの柱、日赤は9,500万円の追加資金援助を実施

 これまでの赤十字国際ニュースでもお伝えしてきたとおり、アフリカはこの数十年で最も深刻な食料危機に直面し、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国では、14,600万人もの人びとが食料不足に苦しんでいます。根底にある貧困や紛争の問題に加え、気候変動による干ばつや洪水、新型コロナウイルス感染症の流行などの危機が拍車をかけ、特に過去5年間の食料危機の悪化は著しいものになりました。この間、急性食料不安(※)を経験した人は83%も増加、その数は5,400万人と推測されています。

(※)急性食料不安とは、十分な食料を摂取できないことで、その人の生命や生活が差し迫った危険にさらされること

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2020年以降ほとんど雨が降らず深刻な干ばつに見舞われているケニアのガリッサ地区

 飢餓は命の危機を直接意味するといっても過言ではありません。そして、遠く離れた場所の出来事のように思えますが、日本の全人口を超える約1億4,600万人もの人びとが日々命が差し迫った危険にさらされているこの状況は決して見過ごせるものではありません。食料危機の現状と対応する赤十字の支援について、改めてお伝えしたいと思います。

■危機に直面するアフリカの人びとの声、支援を受けて…

スコラスティカさん

 私は8人の子どもたちと生活しています。辺りは干ばつが進み、牛も牧草地を求めて出て行ってしまったので、昼も夜も食べ物がない状況が続くかもしれません。

 村では家畜が死んで、同時に物価も高騰しています。一日働いてもらえるお金は、200シリングから500シリング(約200円~500円)です。それはたった1食分の食事代にしかならないため夕方にはお腹が空いてしまいます。

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  女性の生活も非常に大変です。若い人たちは、動物たちと一緒にエサになる草を探しに数日間歩きます。そんな中、家畜を略奪しようとした人に殺されてしまった若者もいれば、生活が苦しく自ら命を絶った人もいました。

 ケニア赤十字社の給水支援には本当に助けられています。夜、仕事から戻ると、設置された井戸から水を汲むことができるようになりました。以前は、水を求めて数時間歩く必要がありましたし、やっと水場にたどり着いても象に追い払われ、何も得ることなく帰ることもありました。今はそんな問題も落ち着いてきています。

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エンベヨさん

 私たちの最大の問題は干ばつです。木は枯れ、動物も死んで、紛争も悪化しています。まだ家畜を飼っている人もいますが、彼らもやせ細った動物を売ることができません。私の家畜48頭も数年前に盗まれてしまいました。

 これまでも何度か支援を受けることはありましたが、継続的なものとは言えませんでした。

 ケニア赤十字社の給水プロジェクトは本当にありがたいです。水を引くパイプが設置され農業を始めることができました。今は、この水がなければ本当に困ってしまいます。私は、農業を続けることが未来への良い選択になることを信じています。収入を得て子どもたちが学校に行けるようになれば、きっと未来を変えることができるはずです。

ファルヒヤさん

 近年この村ではお金も食料もまともにない日々が続いていました。私のお店の商売もうまくいかず、生活はかなり厳しかったです。でも、赤十字がこの村にきて現金を給付してくれたので、村の人びとはまた買い物をして、私も収入が得られるようになりました。私自身も、必要なものを買ったり、高校生になる子どもたちの学費に充てたりできています。今では少し生活が良くなり、村の人びとも安心しています。

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■赤十字が掲げる支援の3つの柱

 国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)と被災国赤十字社は深刻化するアフリカの食料危機を受け、昨年10月に緊急救援アピール(資金援助要請)を発出しました。今月5月11日にはその内容が改訂され、総額2億1,500万スイスフラン(約320億円)へ増額。最も危機的な状況にある15か国の770万人を対象に下記3つの柱のもと、支援を実施しています。

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 多目的現金給付を通じた緊急の食料支援を拡大することで、食料へのアクセス、消費レベルを維持していくことを目指します。また、農作物や畜産物の生産量を向上させ、収入を得るための教育・資材提供など、持続可能な生計支援を続けています。

支援実績:

   645,718へ多目的現金を給付

   43,883世帯へ農耕具や資材を提供

   39,119へ農作物生産のトレーニングを実施

   20,406世帯へ家畜を育てるためのノウハウや資材などを提供

   8,816へ畜産物生産のトレーニングを実施

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提供された食料を運ぶ女性を手伝うケニア赤十字社ボランティア

②健康と栄養health.JPG

 栄養に関する教育、栄養失調症例の管理、健康増進、精神保健及び心理社会的支援の取り組みにより、425,193人へ健康と栄養に関する支援を届けました。

例:子どもの栄養失調のスクリーニング、動物のワクチンキャンペーン、感染症のリスク啓発、チャイルドフレンドリースペース(子どもの遊び場)の設置など

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ソマリア赤新月社が運営するクリニックで栄養失調のスクリーニング検査を受けるマリダちゃん(9か月)

③給水および衛生促進WASH.JPG

 WASH(給水・衛生及び衛生促進)は命を救うための支援にとどまらず、健康、尊厳、保護、生計、レジリエンスの改善につながります。1,187,851人へ水と衛生に関する支援を届けました。

例:給水設備の復旧や給水タンクの設置、家庭用の給水コンテナの配付、コミュニティベースの衛生促進活動など

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ジンバブエ赤十字社の給水支援により小学校に設置された蛇口から安全な水を汲む子どもたち

■日本赤十字社は9,500万円の追加資金援助を実施

 2022年NHK海外たすけあいキャンペーンでも支援を呼び掛けたアフリカの食料危機。キャンペーンにお寄せいただいたご寄付により、上記のアピールに対して9,500万円の追加資金援助を実施いたしました。 今回の送金を含め、昨年10月以降の大規模アピールへの拠出総額は12,500万円になります。皆さまの温かなご寄付のもと追加支援が行えましたこと、心より感謝申し上げます。

 アフリカの飢餓の連鎖を断ち切るためには、一過性の緊急支援だけではなく、持続可能な生計支援が不可欠です。

 人間のいのちと健康、尊厳を守るため、赤十字は今後もアフリカの食料危機に目を向け、息の長い支援を続けていきます。

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