第47回フローレンス・ナイチンゲール記章受章者発表。日本からは、竹下 喜久子さん・秋山 正子さんが受章
2年に一度、顕著な功績のあった看護師等に贈られる世界最高の記章であるフローレンス・ナイチンゲール記章の受章者が、ナイチンゲール女史の生誕の日である5月12日、赤十字国際委員会(ICRC)ナイチンゲール記章選考委員会(スイス・ジュネーブ)から発表されました。
今回は、世界18の国と地域の29名が受章し、日本からは竹下 喜久子さん(69)、秋山 正子さん(68)が受章しました。
竹下さんは、国内外の災害救護活動への画期的な取り組み及び医療施設の看護師への実践教育などの功績が、秋山さんはがん患者への訪問看護実践の経験から地域住民が誰でも、いつでも気軽に利用・相談できる環境整備、地域の保健活動の先駆性が認められました。
今回の受章により、受章者総数は1517人となり、日本からの受章者は110名となりました。
【フローレンス・ナイチンゲール記章】
この記章は、紛争下において敵味方の区別なく負傷者を保護する役割を担う赤十字が、1907年および1912年の赤十字国際会議において、顕著な功績のある世界各国の看護師を顕彰し、授与することを決定したものです。ナイチンゲール女史の生誕100周年を記念して、1920(大正9)年に第1回の授与が行われました。それ以来、隔年でナイチンゲール女史の生誕の日にあたる5月12日に赤十字国際委員会(ICRC)から発表されています。
受章資格を有する者は、看護師や篤志看護補助者であって、平時または戦時において傷病者、障がい者または紛争や災害の犠牲者に対して偉大な勇気を持って献身的な活動をした者、公衆衛生や看護教育の分野で顕著な実績を残した者、創造的・先駆的貢献を果たした者です。
同記章は、鍍銀製アーモンド型メダルで、表面は燭(ともしび)を手にしたナイチンゲール女史の像と「1820~1910年フローレンス・ナイチンゲール女史記念」の文字があり、裏面には受章者名と、ラテン語で「博愛の功徳を顕揚し、これを永遠に世界に伝える」と刻まれています。
【受章者のプロフィール】
竹下 喜久子(たけした きくこ)
- 熊本県生まれ(69歳)
- 千葉県千葉市在住
- 現 職:一般財団法人 日本赤十字社看護師同方会理事長
- 主な功績:
東日本大震災発生当時、甚大な被害を受けた石巻赤十字病院(宮城県)の看護スタッフ支援、同院の機能維持のために日本赤十字社看護部門のトップとして強いリーダーシップのもと、全国の赤十字医療施設からの看護師派遣に尽力。
6カ月間に及ぶ支援に奔走し、同院の災害医療体制維持に大きく貢献した。
また、中・長期の災害救護活動を主体とした日本赤十字社の長い災害救護活動の歴史の中で、初めて、避難所などで生活する被災者の生活支援や慢性疾患増悪予防の観点から「看護ケア班」を編成・派遣。被災者が長期化する避難生活や仮設住宅へと生活の拠点が移行し、継続的に心身の健康状態の変化に支援が必要であるとの判断から保健指導、健康相談、高齢者ケアを実施した。
平成19(2007)年に日本赤十字社として、看護職員個々の看護実践能力開発を支援するツール「赤十字医療施設のキャリア開発ラダー」を整備、導入。
全国に92の病院グループとして、看護実践能力だけでなく管理的な能力の段階や専門看護師・認定看護師としての段階をも含み、特に赤十字の救護活動の実践を取り入れた指標を作成・導入した全国でも画期的な制度であった。
平成16(2004)年12月26日にインドネシア・スマトラ島沖で発生したマグニチュード9.1の地震及びその後の津波によって壊滅的被害を受けたインドネシア共和国アチェ州バンダアチェ市、アチェブサール県内の看護学校4校に対し災害看護教育の導入を支援。災害看護教育が教授されていない現地の看護学校で、看護学生が災害看護の訓練を受けた教員から災害看護を学んだ後に看護師となり、実践を通して災害救護活動を行うことが極めて有益と考え、現地語の教科書を作成し、教員への教授法まで幅広い領域での支援に尽力。
【受章者のプロフィール】
秋山 正子(あきやま まさこ)
- 秋田県生まれ(68歳)
- 東京都新宿区在住
- 現 職:認定特定非営利活動法人 maggie's tokyo共同代表理事・センター長 ㈱ケアーズ白十字訪問看護ステーション・白十字ヘルパーステーション統括所長、暮らしの保健室室長
- 主な功績:
自らが所長を務めていた訪問看護ステーションでは、利用者・療養者の尊 厳を重んじ、本人の希望を中心に置いて看護を行うとともに、本人を支える家族にも配慮し、近隣や友人のネットワーク構築を重視した、ニーズに即した質の高い訪問看護を展開。
暮らし慣れた地域、家で本人・家族・近隣ネットワークを柔軟に組み立て、在宅ホスピスケアを推進してきた成果として、秋山氏が運営する訪問看護ステーションにおける在宅での看取りは6割を超える。
また、訪問看護の現場で抱える課題「状態が悪化してからの依頼に対して『もっと早く関わっていれば』というケース」に対し、英国のマギーズがんケアリングセンターに想を得た「暮らしの保健室」を都内巨大団地の商店街の一画に立ち上げた。
これは、「誰でも、予約なしで、無料で気軽に」立ち寄ることのできる地域の健康よろず相談室で、日本初の取り組みである。現在では、暮らしの保健室をモデルにした活動は、全国に50を超えるまでに広がりをみせている。
また、家庭的でくつろげる心地よい建物・空間にがんに詳しい看護師・心理士が常駐し友人のように関わることで、本人がくつろぎ自分の力を取り戻す環境整備として英国のマギーズがんケアリングセンターの日本初の正式なセンターとして「マギーズ東京」を開設。
マギーズ東京の先駆性は、訪問看護のプロとがんの経験者の両方の視点での運営、全国の相談支援の質の向上のために、そのエッセンスを広く提供している点である。